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本、音楽、ゲームなどの書評、感想をネタバレしない程度に書いていきます。詳しくは『このブログについて』をご覧下さい。 貴方のインドアライフに役立てば幸いです。
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凡人には想像できない新世界


新世界より(上) (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。いつわりの共同体が隠しているものとは―。何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる。







さて、ようやく貴志祐介作品の積み本もこれだけになった。(当サイトでレビューしていないものはまだあるけれど)
お盆休みの好機に、読破するぜ!という意気込みで読み終えた。

SF長編ということで、なかなか特殊な世界観をしている。
魔法みたいな力、呪力が宿る人間たちが主人公格で、バケネズミやミノシロモドキといった未知の生物が生息するはるか未来の話。
機械などの科学が支配するような現代社会とは違い、仏教じみた宗教観のもと、呪力という新たな力を用いた新しい文化が形成されている。また、アスファルトやコンクリートだらけの現代とは違い、表紙にあるようなススキや枯れ尾花などの植物が群生する、まったく異質な世界での話となっている。

この世界観に惹かれると共に、読んでいくうちに呪力とは何か、この時代の人間、文化、バケネズミなどの他の生物との関係などが分かっていくことで、生活が一転するミステリー・ホラー要素も兼ねている。主人公たちが子どもであると言うこともあり、自分たちの住む世界に盲目的で、そこから思わぬ形で上記の事柄を知るという方向性で、伏線を回収するので、読者としても入り込みやすい。
中盤になると、大方、この世界がどうなっているのか分かってくる。ということもあり、少し中だるみを感じるところはあったが、次なる疑問、次なる恐怖がじわじわと感じられるようになる。

独特の進化を遂げている生物たち、生態系も見所の一つ。貴志祐介作品には生物学チックな仔細に記された生物描写があったものだが、本作ではさらに色濃く書かれており、それがこの未来の世界観を描く上でかなり成功していると言える。何を食べているのか、天敵は何か、その進化の過程、といった部分を詳しく練り上げ、現代には生息していない未知の生物の数々を描いている点はさすがと言わざるを得ない。

読み終えての感想だが、結末はいくらでも二流三流のSF映画みたいにありきたりにできたはずだが、そういった心配を吹き飛ばすほどにしっかりしていた。それに、ラスト一行、実に深い。
後味の悪さはあるが、これは現代に生きる私たちに対するメッセージのような作品だと思う。

評価は何となく★4つ。展開が想像できないワクワク感、世界観も圧巻、と文句はないのだが、好みの問題。


評価:★★★★☆

新世界より(上) (講談社文庫)
貴志 祐介
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新世界より(中) (講談社文庫)
貴志 祐介
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新世界より(下) (講談社文庫)
貴志 祐介
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多重人格とエンパス


十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、彼女は身も凍る思いがした。第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。




さて、貴志祐介ファンと言っておきながら、デビュー作である本作に触れていない私。そして、ようやく読了。
心理学に長けた著者ならではといった、多重人格障害を扱う作品。
主人公は他人の感情を読み取ることができる能力者、エンパス。それを活用して、阪神大震災の被災者に対するメンタルケアのボランティアをしていた。そんななか、出会った多重人格障害の少女と対面し、彼女の中に潜む恐ろしい人格に直面する、といった話。

まだ統合失調症ではなく精神分裂病と呼ばれていた頃の作品であり、現代ほど鬱などの精神病に理解のない時代背景と思われる。13の多重人格はそこまで覚えずとも分かる内容であり、名前から直感的にどんな人格かわかるように書かれているのはありがたい。

この本の見所は、多重人格を題材に展開する恐ろしい事態である。
特に、ISOLAが何者かについてはなかなか想像の斜め上を行き、ゾッとした。

著者の他の作品に比べると、恐ろしさや面白さにおいて個人的に見劣りしていたが、ストーリーの入りやすさは変わらず。
心理学の豊富な知識の交え方も相変わらずである。

悪くない、といった評価。


評価:★★★☆☆

十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)
貴志 祐介
角川書店
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サクッと読める密室4つ。


鍵のかかった部屋
内容紹介
防犯コンサルタント(本職は泥棒?)・榎本と弁護士・純子のコンビが、4つの超絶密室トリックに挑む。表題作ほか「佇む男」「歪んだ箱」「密室劇場」を収録。防犯探偵・榎本シリーズ、待望の最新刊登場!






『狐火の家』
の時と同じようなキャッチだけど、サクッと読める密室トリックの短編4編です。
『硝子のハンマー』『狐火の家』でおなじみの防犯コンサルタント(元泥棒?)と弁護士のコンビシリーズ。元泥棒ならではの得意分野である密室トリックを崩す様は、ただの探偵とは違ってなかなか面白い。ライトな感じで読める一方で、解錠関連の専門的知識は読んでいて、ピッキングに興味がわきそうなくらいのいい意味での悪影響っぷり。
本書では短編が4つ収録されている。

●『佇む男』
帯には『別解潰しの密室』とある。犯人は分かっているんだ。しかし密室が解けない。この密室のからくりをどう見破るのか、至ってスタンダードにして究極系といえる手軽に読める密室殺人もの
これ系のトリックの作品を読んだこともあるだけにトリックは何となく読めてしまったが、面白かったのはラストの犯人の言い逃れ。よくある言い逃れだが、犯行は自明の理という他ない(笑)

●『鍵のかかった部屋』
短編の割にストーリーですでに惹きつけられてしまった。登場人物の関係が物悲しかったり、クスッと面白かったり。そしてまた、図解雑学シリーズで『ピッキング』なんて出ないかなとか思うような図説のサムターン回しなどが掲載されていて、読んでいて吹き出しそうになった。
なかなか凝ったトリックではあったが、「警察さん仕事してください・・・・・・」という思いが強い。

●『歪んだ箱』

倒叙推理小説の構成。と言っても、本書の短編はどれも犯人がわかっているようなもの(犯人じゃなく密室に焦点が当たっているもの)なので、これといった代わり映えはないかと思ったが、防犯コンサルタント榎本のただ者じゃないオーラを犯人側の視点から拝めるというのはなかなか面白かった。トリックは何とも言えないなぁ。とりあえず犯人さんお疲れ様です。

●『密室劇場』
完全なコミカル路線の推理もの。一応、上記3つの短編と違い、犯人を当てようという姿勢はある。だがまぁ、読者が推理するほどの材料はないので、サラッと読んでいって密室トリックを楽しむもの。
しかし、わざと外して寒さを表現しているところがそのまま外している感じがして個人的には面白くなかった。


総観としては、『密室劇場』以外は面白かったという感じ。しかし、値段云々を考慮するとサッパリしすぎていたかなぁ、と。それだけサラッと読める読みやすさに特化した短編集と言うべきなのだが、ボリューム不足感がする。
個人的にはキャラクターに魅力を感じていることもあり、このシリーズは好きなので、そろそろ劇的な長編をお願いしたい。


評価:★★★☆☆

鍵のかかった部屋
「鍵のかかった部屋」
 [単行本]
 著者:貴志 祐介
 出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
 発売日:2011-07-26
 価格:¥ 1,680
 
 
恐ろしきゼロサムゲーム


クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

出版社/著者からの内容紹介

戦慄の新感覚ゲームノベルが、新装丁・コレクターズアイテム版で再登場!!

藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ?傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」



これまた十年ほど前に読了した貴志祐介氏の名作を再び読んでみることにした。私が貴志祐介ファンになった要因の一冊でもあった記憶だけは残っている。

わけもわからぬまま火星のような地形に放り込まれた主人公。同じ境遇の数人の人間で繰り広げられるゼロサムゲームの様相。
といったありがちな設定。
食糧?サバイバル用具?護身用具?情報?あなたはこの状況で何を求めるか。そこで得たもののやりとりの中で、次第にお互いの溝が深まる。
個人的にこういうクローズドサークルは連続殺人ものよりも好きである。

とは言え、ルールなどの設定が面白さに直結するため、その点が読者にとっても合う合わないがでそう。

その上、この著者お得意の取材力。今回は民俗学や動物や昆虫、ボーイスカウトの知識といった部分が濃い。ストーリーのバックグラウンドには欠かせない点である一方、クドいとも取れるのがやはり貴志祐介節か。
本作では個人的にそういった点での展開の中だるみが感じられた。

結末。途中から察しのいい人はわかるかもしれないオチ。真相の部分はホラーなので置いておいて、恐怖面での面白さはと言われると、なかなか絶品。
ただ、その恐怖に単調さが出ているかな、と辛口な評価をしてみる。特に後半に差し掛かるにつれて、同じ質の恐怖が淡々と続くため、「わかったから、それで結果はどうなるの?」という冷めた目で読み進めていく要素となった。

サバイバルや生物学などに関しての取材のすばらしさはある。
だが、サバイバル要素は生き抜くための臨場感、必死な姿こそ描いているが、この作品の面白さや恐怖にはあまり直結しないこともある。舞台としてはそういう設定でなければならないものだが、そこを掘り下げすぎて個人的にはクドく感じられた。

確かに恐ろしく、確かに面白いのだが、どうしても『天使の囀り』『黒い家』と比べて見劣りしてしまうなぁ、といったところだ。


評価:★★★★☆

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)
「クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)」
 [文庫]
 著者:貴志 祐介
 出版:角川書店
 発売日:1999-04
 価格:¥ 700
 

 
好みの問題かなあ……?

ダークゾーン

内容(「BOOK」データベースより)
神の仕掛けか、悪魔の所業か。地獄のバトルが今、始まる。







ダークゾーンって、これまたそそらないタイトルだなあ。と思いはしたが、貴志祐介好きの私はすぐにレジへ持っていく。

話のあらましは、世界と断絶された孤島で、わけもわからぬまま赤軍の王将として存在している主人公が、青軍との戦に出ることになるというもの。『わけもわからぬ』というのはその通りで、始まりからいきなりその世界に飛び込んで赤軍の王将として立っており、説明を受けて青軍と戦って勝て、と言われるのである。
まぁ、何とも急な話だが、下手な小理屈を重ねてファンタジーに持っていくより、伏線としても話の展開の早さとしてもこういう方が面白いかもしれない。

さて、その戦いのルールだが、赤軍と青軍がそれぞれ元は人間だったと思われる者が、一つ眼(キュクロプス)、死の手(リーサル・タッチ)、始祖鳥(アーキー)、歩兵(ポーン)といった特殊な能力を持っている異形の駒となって相手軍の王将を四度殺せば勝ちというもの。王将以外の駒が死んだとき、相手の駒となって動くことができる。要は、チェスや将棋のようなもの。
なぜ戦っているのか、勝ったらどうなるのかといったことはさっぱり分からず、負ければ消滅するという事実だけが知らされる

熱い戦略バトルファンタジーといった感じだろう。設定こそ単純だが、これをどれほど面白く書いてくれるかが著者の手腕の見せ所。

読後感としては、バトルパートの戦略的な面白みよりも、私としては断章を通して述べられる現実世界での主人公の成り行きの方が気になってしまった。雑誌での連載ものということもあってか、全体の流れや伏線面ではどうも単調気味で味気なさがあったのは残念。「なんと!そんな意外な戦略が!」というわけでもなかった。

オチについては、こんなもんですかね。期待してはいなかったが、正直上手く締めたなぁとは思えなかった
まぁ一応、ミステリーとして含ませてもよさそうだ。

自称貴志祐介ファンとしては貴志祐介氏の良さが感じられない作品だったかなあ、と。著者の大好きな昆虫学的な知識と生々しい表現は空回り気味な印象で、地獄のような世界観を描きたかったのだろうが、戦略的ゲーム性の面ではあまり必要性が感じられなかったというのもある。個人的にはゲーム的感覚が恐ろしい世界観を打ち消したかな、と

将棋の対局に似た相手との読み合いやつばぜりあいを表現した点は申し分ないかもしれない。
期待していただけに、ちょっと評価は辛く。


評価:★★☆☆☆

ダークゾーン
「ダークゾーン」
 [単行本]
 著者:貴志祐介
 出版:祥伝社
 発売日:2011-02-11
 価格:¥ 1,890
 

 
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