ここまで攻撃的な小説は初めて
内容(「BOOK」データベースより)
捨て子の「白」を拾ったがために、大きく狂いはじめる主人公の人生。家族は村八分に遭い、主人公はクラスメイトから生々しく陰湿ないじめを受ける。村を出た主人公は港町に流れ、やがて大都会・東暁(とうぎょう)を目指すことに。生き抜くために悪事に手を染め、殺伐とした東暁で地べたを這いつくばって生きる主人公が唯一気にかけていたのは、村に置いてきた白のことだった―。『このミステリーがすごい!』大賞第8回(2010年)大賞受賞作。
いろいろ混沌としている問題作。
状況説明に乏しく、読者そっちのけで進むストーリー。
ミステリーと言えるのだろうか。。。
歴史小説? SF小説? ロードノベル? 社会派小説? 青春小説?
何を思って読めばいいのかわからぬまま、ついていく。
もはや、そういった意味でミステリー。
すると、あるとき気づく。
いつの間にかこの訳の分からない世界で、何が問題で何が起こっているのかが何となく分かってくるのだ。
読者に媚を売る姿勢を感じない、「俺についてこい」的な小説のくせに、牽引力がある。
物語に特別山もなく、淡々と非常に冷淡に語られる内容にうんざりすることもある。
だが、そんななか、だんだんと作者が何を描こうとしているのか、その力を感じてくる。
王道でも邪道でもない、我が道を往く。
優等生の作品なんて糞食らえ、用意された感動のストーリーなんて期待するな。
既存の小説とは一線を画し、異彩を放っている。
こんなデビュー作が、『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。大物臭がしてならない。
新人ってのはこういうオリジナリティある勢いが必要なのだろう。
まさに問題作。
内容も登場人物も物騒きわまりない。
エンターテイメントではなく、文芸作品として迎え入れてもよいような気がする。
とりあえずだけど、場面転換がわかりにくすぎて、終盤になるまで過去を振り返る形の作品と分からなかったのが痛い。
どんな内容なんだよ!って聞かれても、私もわからない。
言えることは、なんだかすごい作品だということ。
こんな荒い作品なのに、結末だけは何故か感動してしまった。
面白かったとは言えないので、個人的評価は低いが買って読んだことは決して後悔はしていない。
この著者は、もしかしたら将来大物になっているかも知れない。
評価:★★☆☆☆
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