心の奥を理解することの難しさを知る
内容(「BOOK」データベースより)
相手の言いたいことを本当にわかっていますか?本音を引き出すプロカウンセラーの技。
心理カウンセラーや臨床心理士に少なからず興味があり、そのコミュニケーション技術を知りたいと思い、手に取ってみたこの本。
傾聴という言葉を聞き慣れない人もいるかと思うが、人の言っていることや話していることを熱心に聞くというのが辞書的な意味。しかし、この熱心に聞くということがどれだけ難しいかがよくわかる。また、熱心に聞き取り、相手が本当に言いたいことを理解した上で、答えるということの難しさが練習問題付きでわかる。
構成は以下の通り。
●第一章『「傾聴」という援助法について』
まずは傾聴そのものの意味や、その援助法に大切なもの、などこれから読んで実践していく上で意識したいことを述べている。
●第二章『傾聴トレーニングの実践――応答の仕方』
実際にカウンセリングの際、ありそうな(私はカウンセラーの経験がないので)クライアントからの相談を挙げて、それに対する応答の仕方を練習する。本書の核となる章。
内容は『引きこもりの息子をもつ母親』から『人生で何をしたらいいかわからない女子大生』、また自殺をしたいと言う人やニートについての応答などが数例書かれ、その善し悪しを検討している。読者の回答欄もあり、実際のカウンセリングを行う練習にもなるだろう。(本当ならばすぐに応答しなければならないだろうが)
やはり、素人の私が試してみると、自分の応答の駄目な部分が山ほど見つかり、プロとの違いが如実にわかりなかなか面白い。その人の言っていることや言いたいことをありのまま理解して言い直すことが、いかに重要で役に立つ物かというのもここで理解できた。
●第三章『傾聴の実際』
ここでは、実例を挙げて、実際にどのように受け答えしていくのかを述べています。その受け答えのいい部分と悪い部分、またこの発言に対して、こう受け答えていたらおそらくクライアントはこう返してきたでしょう、といったところまで記している。
●第四章『傾聴力をつけるために』
タイトルの通り、傾聴力を付けるトレーニングを提唱する。著者なりの意見だが、結論としてはやはり実際に意識しながら実践しないことには始まらないという印象。
傾聴という点はもちろんだが、クライアントの話す少ない言葉だけで相手の気持ちや伝えたいこと、心理まで推測する力も勉強でき、「プロはやはり考え方が違うな」と傾倒してしまう。
あくまで素人の観点なので、実際にカウンセリングに従事している方の目には、本書がどう映っているかはわからないが、少なくとも、傾聴の重要性と難しさ、また、カウンセリングに来たクライアントが本当に言いたいことについて考えることを教えてくれる良書ではないだろうか。
しかし、カウンセリングに従事していない素人だけに、「本当にこれでクライアントは心を開くのか」といった疑問が残る。カウンセリングで最善を尽くしたにもかかわらず、クライアントが心を開かず手こずった実例があれば欲しかったところだが、そういう場合はクライアント側に拒否されて会わなくなり実例も何も無いのが現状だろうか。
評価:★★★★☆
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