嫌いじゃないです
内容(「BOOK」データベースより)
省エネをモットーとする折木奉太郎は“古典部”部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する―。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか“古典部”を過ぎゆく1年を描いた全7編。
けど、好きとも言い切れない感じ。
さてさて、古典部シリーズ、第4弾。
今回は短編集ということで、各短編ごとにいつものごとく折木奉太郎が謎を解く形だ。
少ない謎から推理し、真実を見抜く本作の趣向。何となくつまらない話だったり、少し飛躍した推理がそのまま答えだったり、と不満点はあるが、青春ミステリーの形としてライトに描くならこんな感じでいいと思う。
タイトルとそれぞれの感想は以下の通り。
●『やるべきことなら手短に』
入部当時の、古典部に所属してしまった折木の心象を表すお話。いまいちパッとしなかったかな、と。
●『大罪を犯す』
ちょっとした謎を、少ない手がかりで真相に辿り着く古典部シリーズの基本に忠実な話。「……で?」という感想。
●『正体見たり』
ちょっとした謎を、少ない手がかりで真相に辿り着く古典部シリーズの基本に忠実な話その2。なんかアニメやライトノベルならサービス回かなぁ、という印象が残っただけで、ミステリー面の感動は薄い。
●『心あたりのある者は』
同じく、ちょっとした謎を、少ない手がかりで真相に辿り着く古典部シリーズの基本に忠実な話……なのだが、いつになく推理の飛躍がひどい。まぁ、『瓢箪から駒が出る』がお題だと思うので、こんなものかと。
●『あきましておめでとう』
折木と千反田が某所に閉じ込められ、脱出を懸命に試みるというちょっとエンタメ性が増した話。お二人の仲は……!と思いながら読むも……。
●『手作りチョコレート事件』
伊原がなぜ里志を好きになったのかはともかく、里志がなぜはぐらかすのかというのはそろそろ教えて欲しいところに、この話でようやく回収が入る。
感想を述べるならば、「ウゼえ……」と。古典部シリーズ全般に言える、妙にシャレた回りくどい台詞で煙に巻かれるウザさである。
高校生の人生の葛藤と言えば、聞こえはいいかもしれないが、ただの自分の哲学に酔っているナルシストにしか見えない。
例のごとく、サクッとしたミステリー要素がある。というか、今まで里志が伊原の求愛を拒んでいたのが謎にしたミステリー。
ついでに言うと、ゲームの話は縮めて欲しい。
●『遠回りする雛』
表題作。暖かい……。暖かい終わりだなぁ。なんかもうこれで最終話って感触がしてしまうほど。ミステリー云々無しで読んでおくべき。
前作の
『クドリャフカの順番』で、残念だったところが完治して元に戻った感じがする。イメージとしては、シリーズ第1弾の
『氷菓』前半のようなテイストだ。
全体の感想としては、まぁ
特筆して面白いところはないかなあ。というところ。
良くも悪くも青春小説。ミステリー要素はおまけといった感じ。キャラクターに魅力を感じているなら読める、そうでなければ苦痛。というところ。
個人的には、そこまで魅力あふれる作品ではないかなぁと。だが、
『愚者のエンドロール』が良作なだけに、どうも捨てきれない。そんな感じである。
評価:★★☆☆☆
米澤 穂信
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