ページをめくる手が止まらねえ!!!
洋書に疎い私だが、友人の薦めで手に取ったのがこの『ゲームの達人』という本。
最近になって新超訳版が出版されたようで、どうせだからこちらを手にした。
概要などもなく、どんなストーリーか全く知らずに読み始めたのは久しぶりだったが、「ページをめくる手が止まらない!」「世界を夢中にさせた大ベストセラー!」などと評された名著らしいので、いろいろと安心して読める。
貧しい生活をおくるスコットランドの青年ジェミーが南アフリカで起こったダイヤモンドラッシュに便乗するという話。ダイヤモンドを掘って豊かな生活を手に入れるという希望を前に、数え切れないほどの過酷な生活、人間同士の見にくい駆け引きや詐欺行為が襲いかかる。
そんな和書ではなかなかお目にかかれない(?)ようなスケールのでかい題材だけに、ジェミーに襲いかかるそれらの試練は幾度となく生命の危機に晒されるほどだ。
訳書とは言え、その描写は生々しく、生と死、金持ちと貧民、天国と地獄の対比が読者の脳裏に焼き付く。
序盤をすぎると、本作がどういった構成なのか次第に理解できるようになる。
この一族が世界規模で進出していく様、世襲や世の中の移り行きが焦点になり、ますますスケールがでかくなる。ここまで行くと私的には地に足が付かない感じがする不安な展開に感じられたが、意外とそうでもない。
パラパラとめくってしまう理由としてはある一つの利点が強い。
それは、
『非常に簡潔にまとめられている』ということ。
本書の帯に書かれていたのだが、著者は最初に書き上げたストーリーを約1/6に削ぎ落として小説を完成させるというスタイルらしい。
そのおかげか、この
上下巻という900ページほどのボリュームにもかかわらず、間怠っこいところがまるでなかった。
本当にサクサク進むのだ。会話内容や描写、場面転換もすべてが必要最小限にして重要で面白いところだけを書いている印象。
しかし、話が個人的に微妙だった。たしかにめくる手が止まらないし、面白いことは面白いのだが、噂の『どんでん返し』が弱い。ミステリー好きなのもあってか、こういうドラマで取り扱われるような題材のストーリーに、度肝を抜かれるような点はあまり存在しなかった。「あぁ、そうなっちゃんだ。やっぱり」という方が多い。
また、私だけかもしれないが、序盤と後半は非常にワクワクして読ませていただいたが、中盤の話が読後に思い出せないほど印象が薄い。読んでいて中だるみを感じさせた気がした。とは言え、サクサク読める点は変わらないので、そこで本を積むことはなかったのだが。
そして、ラストが自分には面白さを理解できなかった。外国人テイストなのかなあ。要は最後に落とされた感じがしなかったと言うか。
非常に個人的なマイナス点ではあるのだが、サクサク読めてページをめくる手が止まらないのは事実。常に面白いというのもほぼ間違いない(私的には中盤が面白く感じられなかった)。
とにかく非常にプラス点が多い作品。
ただ、減点方式の評価では★3くらいかな、と。
ちなみに、翻訳の方は全く違和感なく、すっと頭に入るので問題ありません。
ただ、原作との比較となるとわかりませんが。
評価:★★★☆☆
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