本格ミステリーと言われまして
内容(「BOOK」データベースより)
気がついたとき男は閉ざされた施設の中にいた。そこは、無数の時計が配置された不思議な回廊だった。そして時計はすべて異なる時を刻んでいた。1分ずつ違った、1日24時間の時を示す1440個の時計―。昼夜も知れぬ不気味な空間から脱出する条件は、6時間以内に、その中から、たった1個の“正しい時計”を見つけだすこと!神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎! 名手が放つ本格ミステリ・コレクション。
ちょいと購入。
著者は、とことん本格ミステリを貫いているという話を聞いて、興味がわき本書を手に取った。
短編集である。
短編の素晴らしさがなかなか輝く作品集だ。
著者の筆力がにじみ出る。開始1、2ページで伝わる物語の様子と登場人物の気持ち。サクッと読める事この上ない。
各短編ごとの感想を述べると・・・・・・
●『使用中』
殺人絡みの本格推理かと思ったら、単に心理描写を追求したミステリーといった感じ。こんな小説もありなのか、という認識。ミステリーは本当に広義である。
●『ダブル・プレイ』
オーソドックスな交換殺人だな、という印象。結末が予測できてしまったのは喜ぶべきか悲しむべきか。簡素な感じが短編の良さだが、この作品は少し味気なさがあった。
●『素人芸』
なかなか面白く、なかなか上手に仕上がっている感じ。このだまし方は結構気に入りましたが、ちょっとやりすぎでしょう(笑)
●『盗まれた手紙』
なんだか小難しい。外国人の名前を覚えるのが下手な自分にはそれだけで厳しかったが、それ以上になんか小難しい。トリックも「おぉ!」というほどではないし、なんだか難しいの一言です。
●『イン・メモリアム』
わからない。オチもそうだが、全体としてこれは何なんだろう。現実の話とリンクした内容なのだろうか。さっぱりわからないので、理解できている読者から叱咤の声が飛んできそうで怖い。
●『猫の巡礼』
オチが気になって気になって、展開もなかなか面白くて読みふけったけれど、私の読解力ではただのいい話にしか読みとれなかった。ネタバレサイトに行って出直してきます・・・・・・。
●『四色問題』
なかなか難しい事件で、どう攻略するのかという点が気になったが、スカッとする感じではないなぁ。小難しくひねりすぎな印象がする。
●『幽霊をやとった女』
いたって普通なハードボイルドもの。探偵が事件に巻き込まれ解決。うん、それだけ。探偵ものの教科書のような構成。
●『しらみつぶしの時計』
本書のタイトルでもある作品。一分ごとにずれた1440個の時計が並ぶ回廊から、本当の時刻(日本の標準時刻)を探すというゲーム。二人称視点の作品を触れるのは、ほぼ初めてなので少し戸惑った。読者への挑戦的な意味合いもあってのこの視点だろう。
結末は肩すかし感こそしたが、こういったトンチはこれまで読んできた短編からも著者が好みそうな感じだなぁと思う。悪くないです。
●『トゥ・オブ・アス』
なかなかいろいろと複雑な事件。真相は「なるほど」とは思うけれど、ご都合主義というか偶然に偶然が重なりすぎているので、そこは目をつむりながら読むしかない。
総観としては、著者の様々なミステリーを堪能できる短編集といった感じ。
上記に述べた「オチがわからない・・・・・・」といった部分は読解力の問題もあるが、あとがきで少し各作品の説明もあるので、これを読んで「あぁ、こういう作品だったのか」と納得もできる仕様だ。
数々の短編を収録していたけれど、特筆して「好きだ!」と言える作品がなかったのが残念。
敢えて選ぶならば「素人芸」。このバカバカしさはなかなか楽しめた。
まぁ、
この値段を払って買うほどじゃなかったな、という意味でこの評価だ。
評価:★☆☆☆☆
「しらみつぶしの時計」
[単行本]
著者:法月 綸太郎
出版:祥伝社
発売日:2008-07-23
価格:¥ 1,785
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