小難しさを極力排した社会保険・年金の教科書
内容(「BOOK」データベースより)
社会保険料を払いたくない若手社員、社内清掃のケガを労災にしたくない社長、「このままでは、退職金倒産だ!」と嘆く経理課長…。社長や従業員からもちかけられる難題を、総務担当OLナナと、社会保険労務士の一郎が解決します!総務課OLナナが、会社を救う!?日本で最も愉快な社会保険・年金の本。
2時間でわかると書かれているだけに、かなりわかりやすく極力専門性を省いて概要を知りたいという人向けに書かれた本。内容は社会保険労務士の専門分野、社会保険や年金についてだ。
一社会人として軽く知っておいた方がいいかな、という思いで手に取った私のような人がまさにターゲットだろう。
ちなみに、本書にも書かれているように、
出版こそ2008年だが、改訂され、2011年1月1日時点の法令に基づいた内容。
章のアタマにはその章の要点が何となくわかる4コマ漫画が、中身は物語形式、章末にはその章の『キモ』としてまとめがあるので、軽く学びたい程度の読者にやさしく、ウォーミングアップと復習ができる仕様。
●第1章『給与明細のカラクリを暴く!』
天引きされている社会保険の仕組みがまとめられている。
なぜ、何が天引きされているのか、という点はもちろんだが、その内容、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険といったところを簡単に説明してくれている。
「この章くらいは知ってる」と思っていたが、やはり知らない部分があったりした。
●第2章『残業と保険料の悪魔の方程式』
保険料計算の仕組みがまとめられている。
社会保険の適用される事業、また強制適用される事業、社会保険料や労働保険料の計算方法、標準報酬月額表や労災保険の保険利率なども書かれている。
資料としてはさすがに心許なくはあるが、こういう風に成り立っているということを知ることができるだけで充分と思える。
●第3章『食費節約のために入院します!?』
健康保険・医療保険の仕組みがまとめられている。
医療保険の具体的な範囲と、給付対象などについて書かれている。縁のない話だったので、実感が沸かない部分もある一方で、いつかお世話になることがありそうなのでじっくり勉強したい章だった。
自分から申請しないと保険金がもらえないシステムの保険もあるので、是非とも頭に留めておきたい。
●第4章『消えた年金を探せ!』
厚生年金・国民年金の仕組みがまとめられている。
自営業者と会社員や公務員の年金の違いや、支給方法のいろいろを教えてくれる。ただ単に老後にもらえるだけと思っていた自分は浅はかだった。
年金制度は信頼ならないという意見が広がりつつあるが、メリットもあると認識できた。
●第5章『小料理屋の大将が月30万円の仕事を断ったワケ』
在職老齢年金の仕組みがまとめられている。
定年後に年金が減額されてしまう、という話は聞いたことがあるが主にそれについて述べている。
●第6章『会社を辞めても失業保険がある!ってホントに大丈夫?』
雇用保険の仕組みがまとめられている。
失業保険とその給付、離職と失業の違い、教育訓練給付、雇用継続給付や再就職手当などについて触れている。
このカジュアルさでさえ給付や手当の種類だけで覚えるのが大変なのに、給付方法までいろいろあるという難しさがある。
●第7章『「そんなケガなら労災じゃないよね」はダメ、絶対』
労災保険の仕組みがまとめられている。
労災保険の適用事業、適用される人、ケガや疾病の度合いによる労災保険の違い。また、通勤災害と業務災害の違いについても触れている。本書の趣旨が『簡単に概要だけ』といった内容なので仕方がないが、
判別の難しい通勤災害や業務災害の具体的な判別についても触れて欲しかった。
●第8章『パートタイマー肝っ玉お母さんの逆襲』
パート・試用期間中の人の社会保険がまとめられている。
パートタイマーや試用期間中の社員がどういった条件を満たせば、社会保険に加入しなければならないかという点と、条件を満たしているにもかかわらず加入していなかった場合についてが書かれている。
●第9章『退職金を払ったら倒産するなんて!?』
退職金・企業年金の仕組みがまとめられている。
様々な退職金制度や企業年金制度について書かれている。給付方法や条件、掛け金などの面で種類が多く複雑で説明が難しそうな印象。読んでいて「う~ん、ちんぷんかんぷん」と感じる部分もあった。何度か読み返さないと個人的には理解が苦しい。
退職金の財源面など、企業向けの点が多く、一従業員や経理に関係のない人にはあまり必要のない(気にしなくてもよい?)部分もあるかもしれない。
読み終えて、結局どうだったっけ?と思うことが多いコレ系の本。読み方としては「真美さん(登場人物)がこういう症状だった時、医療保険をどう適用していたかなぁ」という思い返しをする形になる。
また、
章末のまとめとなっている『キモ』の部分は資料的な価値もあるので、その点はよい。
ただ、
コンセプトがコンセプトなので、非常にかいつまんで簡単にまとめあげている。全く知らない素人にはよい入門書だが、「もっと細かく書いているのが欲しいかな」と思うかもしれないと思う人は、これはスルーして別の書物に手を出すのがよいと思う。値段的な意味でも・・・・・・。
個人的には、支給額の計算などで、すでに頭の中がパンクしかけそうになったりしたが、反面、もっと詳しく知りたいと思う部分も多々あった。
非常に複雑なお金絡みの計算をかなり噛み砕いた内容なだけに、「何となくわかった」と思うことはできても、一読しただけではきっと不意に頭の中から引き出すのは難しそう。
自分でまとめたり、何度も読み返すことが肝要かと思う。
評価:★★★☆☆
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