ザ・B級コメディ。だが、それがいい!
内容(「BOOK」データベースより)
“「死神」と呼ばれる殺し屋のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される”。特ダネを追うライター・陣内は、ある組長の死が、実は死神によるものだと聞く。事故として処理された彼の死を追ううちに、陣内は破天荒な天才投資家・本宮や、組長の仇討ちを誓うヤクザとともに、死神の正体に迫っていく。一方で、退官間近の窓際警部と新人刑事もまた、独自に死神を追い始めていた…。第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
【死亡フラグ】とは、漫画などで登場人物の死を予感させる伏線のこと。キャラクターがそれらの言動をとることを「死亡フラグが立つ」という。
上手いなあ。と思う。
死亡フラグというスラングのわりに、市民権を得つつある言葉をタイトルに盛り込む点はもちろん、
凶器がバナナの皮?といったミステリー史上稀に見る(?)謎のトリック。
着眼点と惹きつけ方がしっかりしていて、いい意味で媚びている。
私にとって、これは発売前からチェックせざるを得ない作品だった。
表紙のデザインからも読み取れるが、なかなか
コミカルな仕上がりと言える。
しかも、B級コメディ。これも間違いなく狙ってやっている。
死亡フラグという、言うなれば『あるあるネタ』を小説に昇華させただけに、ところどころに面白いくらいの死亡フラグがちりばめられている。
その一方、死ぬ原因は、バナナの皮?なんて言う謎の事故死のようなもの。
しかも、『死神』という都市伝説級の胡散臭さあふれる犯人を追うところがまた真相が気になって気になってつい読みふけってしまう。
本書は、このミスの隠し玉として刊行されたわけだが、応募段階よりも半分くらいの原稿量になっているらしい。
そのかいあってか、間延び感はなく、サクサクと読めるライトな仕上がりである。
しかし、ラストはちょっと駆け足過ぎじゃないかなあ、とも思った。
まぁ、こんなラストの投げやり気味なB級感もなかなか笑えるところだ。
「くだらねえ~」と言うのも誉め言葉になりそうな。
この狙ったくだらなさは、間違いなくウリであり、ハマる人は間違いなくハマる。
なかなかオリジナリティを確立できているので、またファンも付きやすいんじゃないかなあと思う。
実際、この作品には、作品だけでなく、著者の魅力も感じられる気がする。
もし、七尾与史氏の新作が出るとなれば、即手を出す気でいるあたり、私もすでにファンなのかもしれない。
余談だが、著者はこの作品が刊行される前、作品を応募する前、プロットを立てるあたりから、ブログで進捗状況などを書いている。
興味がある方は是非ご覧ください。
死亡フラグが立つ日記by77044
http://blog.goo.ne.jp/sigmarion3_user
評価:★★★★☆