あまり必要性を感じない……
内容(「BOOK」データベースより)
メンタリングとは、仕事上の秘訣や人間関係の築き方についてアドバイスし、相手のキャリア発達を援助することです。メンタリングをする人=メンターになるためにはどうすべきか、年代別、性別など、タイプ別の事例を交えながら、わかりやすく解説しました。自分がよいメンターであるかどうかを判定するワークシートをつけました。組織でメンター制度を導入する際の手順やポイントについても紹介しました。
カウンセリングとどういった違いがあるのか、相談役として何を考えればよいのか、会社にとって将来何か役に立つことが書かれていないか、といったことで少し興味がわき、本書を取ってみた。
章題は以下の通り。
第1章『メンタリングとは』
メンタリング、メンターの制度。日本ではまだ発達していないため、聞きなれない言葉だが、会社の制度として存在する公的メンター、自然発生的に上司が後輩などにメンタルケアを行う私的メンターの区別をし、その制度としての公的メンターの必要性を説いている。そもそも、メンターというもの自体は昔から存在している、抽象的ではあるが『よき先輩』というような存在だろう。
本章に書かれているように、仕事形態の変化や人間関係の希薄化も伴って、公的メンターが必要となってきたのだろう。
第2章『メンターになるメリット』
社員の悩みなどをサポートするメンターになることによって得るメリットとは何かを説く。想像の範囲内で、「言われるまでもないかなぁ」というものもあれば、「言われてみれば・・・・・・」とメンティ(メンターに相談する相手)に気づかされるようなものもある。
第3章『よいメンターになるには』
メンターとしてやっていくために必要なスキルをまとめている。価値観や考え方といった精神面を主に、助言や応答などの接し方や指導方法を書いている。メンタリングというので、ストレスマネジメント的な要素が多いのかと思いきや、もっと具体的に自分の会社でよい人材を育成する為の方法が書かれていた。メンター自身のキャリアの棚卸しをするというのは、たしかに指導方法の模索において効果的に思える。
第4章『ケース別に見るメンタリング』
ここでは、入社したての人、入社して3年程度の人、入社10年後の人、女性社員といった立場別にメンターとしてどのような考えをすればよいかを説いている。入社してからの年月により、メンティの立場や環境、考え方や悩みは変わり、転職の理由も変わるので、それを的確に捉えることが重要と思われる。
第5章『メンターのジレンマへの対処』
メンタリングをしているうちに、メンター側に発生する悩みの対処が焦点。例えば、メンターがメンティと接する際に、恋愛感情や服従心といった過度の依存や、逆に抵抗を受けられるといった状況などが起こりうる。こういった際、どのようにメンティに接すればよいのかといったことが書かれている。
第6章『組織がメンター制度を導入するとき』
あまり浸透していないメンター制度を組織で導入する際の心がけについて書かれている。導入したと仮定しても、読者も薄々感じてしまうであろう形骸化にもそうならないような工夫を示している。
全体として、
会社へ提出するメンター制度導入の提案書のような雰囲気の内容。無論、ボリュームは書籍クラスなのだが、具体的な説明や長所、会社で導入することを踏まえた考え方や仕組みについてが書かれている。
あまり日本で浸透していないメンターの具体的な内容について述べられていたが、一般的に相談役としての先輩をより形態化した存在というイメージであって、依存ではなく自立を促すという点では、カウンセラーに近い印象である。ただ、メンターの自分らしさ、個としての意見を出す点で、カウンセラーとは性格がまったく異なる。
カウンセラーでもなく、人間関係が密だった昔の『よき先輩』的な存在を制度的に作っておくということは、たしかにメンティにとっては助かることもあると思うが、別段
会社にとって必要な制度かといわれると少し疑問に思う。
世の中、職場で浮いている社員はいるとは思う。その人たちがメンティを必要としているか、あるいは会社にとってその社員がどうなって欲しいかというところが必要性の有無に関わってくると思うのだが、
形骸化が容易に想像できる点でも果たしてわざわざ制度化するほどのものか甚だ疑問である。
会社のことを知っているという点では、キャリアカウンセリングとはまた違う存在なのだが、相談役のいない人の助けとなるポジションといった感じがするので、窓際族の救済措置や会社にとってのよき人材育成といった風な曖昧な長所になっている印象を受けた。
評価:★☆☆☆☆
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