未知のウイルスの恐怖と言うより……
内容(「BOOK」データベースより)
東京郊外のニュータウンに突如発生した奇病は、日本脳炎と診断された。撲滅されたはずの伝染病が今頃なぜ?感染防止と原因究明に奔走する市の保健センター職員たちを悩ます硬直した行政システム、露呈する現代生活の脆さ。その間も、ウイルスは町を蝕み続ける。世紀末の危機管理を問うパニック小説の傑作。
それが流行った時の行政の対応、がテーマという残念さ。
開始から作者の筆力に驚かされる。
始まりから既に感情移入が捗り、面白い。何だ、この求心力。
噂通り、取材に力が入っていると感じされる内容。
本書の医療機関の不手際な対応などを見ていると、現代で疫病が流行りはじめると、こういうことになってしまうのではないか、と不安になる。
しかし、読むにつれてその面白さも冷める。
パニック小説と聞いて、自分が想像していたようなものとは少し違って、
内容の大半が行政の対応や病院やウイルス等の知識ばかりだった。仲のよい人が死んでしまう、見えない生物に脅える恐怖、といった描写は無いことはないが、あまり見られない。
つまりは展開やドラマよりも、理論的なところが多く描かれ、登場人物側としては伝染病対策に徹しているところばかりだった。
黒幕は? その思わくは? といったところも、早々と分かってくることが多く、読者としては、「で、この伝染病をどうするの?」ということしか気にならなくなった。
奇病の感染を扱った、パニック小説と聞きまして手に取ったのだが、
BOOKデータベースにもあるような、『感染防止と原因究明に奔走する市の保健センター職員たちを悩ます硬直した行政システム、露呈する現代生活の脆さ』が書かれている内容のほとんどを占めているのは、個人的に残念。とてもじゃないが、面白い、とは言えなかった。
しかも、ボリュームも無駄に多い。
とにかく、
圧倒的にドラマ成分が足りない。『新種のウイルスによる奇病に対する行政システム』という研究レポートでいいんじゃないですかね。
評価:★☆☆☆☆
篠田 節子
文藝春秋
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