面白くない、なんてことはまるでない。
内容(「BOOK」データベースより)
入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく―。
面白くない、なんてことはまるでない、なんてこともまるでない。
端的に言うと、「あ、そう」という感想。ミステリー的どんでん返しや続きの気になる展開を期待して読んだわけではない。青春群像として読んでみたが、どうも好きになれない。
というのは、面白さがキャラクターの魅力に依存しているからかもしれない。
(そういうのが青春ものなのだろうか?)
この登場人物たちのやりとりをずっと見ていたい、と感じるなら良作。そうでなければ、ただダラダラと続く学生の日記である。事件やイベントはあるが、その成り行きよりも、それを通じて育まれる恋愛、友情などを描くヒューマンドラマな感じなので。それが青春ってことだろうけど。
個人的に、受け入れがたいキャラクターがいたのが辛い。というのも、そのキャラクターは空気が読めない、煩わしい、自己主張の強い、痛々しいキャラクター。ただ、不思議な魅力を持っていて、「こいつなら!」と期待させるなにかがあるのだが、如何せん主張がうるさい。
これは、そういうキャラを作り上げていると言うより、むしろ作者の自己満足、自己主張のように見受けられる。
個々に様々な奇抜なエピソードがあり、怒濤の人生を送ってきたとかそう言うわけでもないので、要はただの個性豊かな学生連中の集まりである。(作中ではそれなりにいろいろあるけれど)
学生の生活を描く点では成功しているかもしれないが、私には面白さが伝わらなかった。
感情移入できない、というよりは全体的に淡泊。
文章面。伊坂作品は初めて手に取るのだが、実力はすごいと思う。読みやすく、話が軽快に進むし、ノリで書いているような稚拙な印象もない。
キャラ作りの面でもだが、独特の洒落の効いた部分があり、露骨にクスッと笑いを取ろうとする部分が頻出するので、それを面白いと感じるか、寒いと感じるかで、また面白さが変わってくる。
個人的には、一回や二回なら笑える部分があっても、何度も書かれるので煩わしかった。
これが伊坂節というのならば、私には合わないかもしれない。
評価:★☆☆☆☆
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