多重人格とエンパス
内容(「BOOK」データベースより)
賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、彼女は身も凍る思いがした。第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
さて、貴志祐介ファンと言っておきながら、デビュー作である本作に触れていない私。そして、ようやく読了。
心理学に長けた著者ならではといった、多重人格障害を扱う作品。
主人公は他人の感情を読み取ることができる能力者、エンパス。それを活用して、阪神大震災の被災者に対するメンタルケアのボランティアをしていた。そんななか、出会った多重人格障害の少女と対面し、彼女の中に潜む恐ろしい人格に直面する、といった話。
まだ統合失調症ではなく精神分裂病と呼ばれていた頃の作品であり、現代ほど鬱などの精神病に理解のない時代背景と思われる。
13の多重人格はそこまで覚えずとも分かる内容であり、名前から直感的にどんな人格かわかるように書かれているのはありがたい。
この本の見所は、多重人格を題材に展開する恐ろしい事態である。
特に、ISOLAが何者かについてはなかなか想像の斜め上を行き、ゾッとした。
著者の他の作品に比べると、恐ろしさや面白さにおいて個人的に見劣りしていたが、ストーリーの入りやすさは変わらず。
心理学の豊富な知識の交え方も相変わらずである。
悪くない、といった評価。
評価:★★★☆☆
貴志 祐介
角川書店
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