忍者ブログ
本、音楽、ゲームなどの書評、感想をネタバレしない程度に書いていきます。詳しくは『このブログについて』をご覧下さい。 貴方のインドアライフに役立てば幸いです。
プロフィール
HN:
エリシオ
性別:
男性
自己紹介:
読書とゲームと投資に明け暮れる、インドア特化型なしがない社会人
カテゴリー
リンク集
当ブログは、リンクフリーです。 相互リンク大歓迎です。 相互リンクを希望の際は helissio5963(アットマーク)gmail.com まで。アットマークは手動入力してくださいな。
ランキング
気に入ったらPlease Click!
人気ブログランキングへ
最新CM
[08/16 エリシオ]
[08/13 古宮昇]
[08/01 エリシオ]
[08/01 秋津学]
[11/22 エリシオ]
最新TB
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

壮大・緻密・ド迫力


ジェノサイド
内容(「BOOK」データベースより)
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。



数々の読者から大賛辞を受けている様子だった話題のこの本。『13階段』が個人的にツボだったこともあり、こりゃ読むしかないな、と。
開いてみるとこれまた字が小さい。この分厚さでこの文量、大ボリュームが保証された。

いきなり、某国大統領だの特殊部隊だのアフリカの内紛だの、ワールドワイドというかスケールのでかい内容で始まる一方で、日本の大学院生のパートもある、今後の絡みが気になる展開。タイトルから何となくどんな話か妄想することはできるが、このスケールのでかさは壮大なストーリーを期待せざるを得ない。

薬学に関する多大な知識。軍事・紛争を散りばめた文章上からでも迫力ある展開が序盤から受けた印象だ。
何が起こっているのかという点が徐々に明かされていく感覚は、この分量の長編ならでは。
早く何か起こってくれ、と思いながらも、緻密な設定や伏線に目を凝らしながら読み進めていく。

そして、帯の売り文句にも書かれていたが、大ボリュームでもツルッと読める面白さがあったのは誇張ではなかった。私は寝る間を惜しむほどではなかったが、ぐいぐい吸い込まれていつの間にか読み終えていた。


細部に関して。

不意に次の行で過去の回想が始まり、数ページ続いたりする点は若干読みづらさを感じた。細かいところではあるが、一行間をおいてくれると嬉しいなあと。
また、「必要以上じゃないの?」と思うくらい創薬の専門的な話も同様に、読みづらくテンポの悪さを感じることもあったが、個人的には許容範囲。

高野和明氏の作品に触れるのは二度目なので断言はできないが、エンタテイメント小説の本筋と社会派の一面を併せ持つ作品を書くのがこの著者の特長なのだろう。作者の訴えがひしひしと伝わる。
それだけならいざ知らず、前述したとおり、本作はとてつもなくスケールの大きい話。地球規模、人類の存亡をかけたといってもいいハリウッド映画よろしくな内容だ。こんな作品はありそうで、なかなか小説ではお目にかかれなかった。きっと収拾が付かなくなるか、B級映画のようなチープな展開や結末になってしまうからかもしれない。
こういった難題を題材にし、どんな結末が待っているのかを予想するのは読者には不可能。ただただページをめくるのみだ。

登場人物を取り巻く不穏や見落としを匂わせる表現など、ミステリー要素もあり、ただのドキドキハラハラどうなるの?という展開だけではない。
そして、巻末には相変わらずの出し惜しまない参考文献の披。この作品を生み出すのに作者が何を読んだのか、とても勉強になる。

評価は満点!と行きたいところだったが、読後感がさっぱりしすぎていたのが個人的に悲しかった。完全に好みの問題ではあるのだが、このスケールのでかいストーリーだと、エピローグにもう少し後日を匂わせる文が欲しかったかなあ、と。
またもう一つ、「ならお前が考えてみろや」と言われるような指摘だが、読後にもタイトルに帰結する感触が欲しかった。どうも話の主眼とやや外れたタイトルな気がする。

正直言って、ハリウッド映画化も夢じゃない、そこら辺のSF映画を凌ぐ出来だと思う。そして、現実でも起こってもおかしくない、と思わせるほどの説得力を放つ力作だ。実際にこうなったら私たちはどうするのか。そんな思いで一杯になる作品だった。
壮大なエンタテイメント長編が読みたい方は是非読んでほしい。


評価:★★★★☆

ジェノサイド
「ジェノサイド」
 [単行本]
 著者:高野 和明
 出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
 発売日:2011-03-30
 価格:¥ 1,890
 
 
PR
考えるなよ!絶対考えるなよ!

シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)


内容(「BOOK」データベースより)

「シロクマのことだけは考えるな」、この心理学の著名な実験があなたの悩みを解決してくれるかもしれません。いますぐ忘れたい辛い恋、成果のない合コン、ギクシャクする上司との関係、どんなに頑張っても幸福感のない日常―あらゆるシチュエーションで私たちがぶつかる問題を気鋭の心理学者が分析、ベストの対処法を教えます。


タイトルのひねり具合に思わず気になってしまう本書。
シロクマとはなんなの?と多くの人が思ったはず。心理学関連の本を読んできた自分には「あぁ、これね」と思ってしまうほどよく取り上げられる有名な実験を筆頭に、人生を変える心理術と称した本である。


●第1章『元気になる心理術』
タイトルにもある、シロクマ実験から考えられる人間の心の働きを利用し、元気になる心理術を紹介する。失恋、仕事の失敗などの傷心やパニック障害まで様々なものに対処できる方法と言える。
また、コントロール・イリュージョンやストレスマグニチュードといったところにも触れ、人間の心の弱点、傷心やストレスを分析し、その対処法を教えてくれる。

●第2章『頭がよくなる心理術』

自己愛、判断ミス、記憶違いなど様々な心理的要因による頭の悪い選択、錯覚を紹介。それらの行動や作用を自覚し、是正することで、頭がよくなるという章題の意味となっている。『錯覚の科学』に通ずる部分もあり、軽く一般向けにまとめられている。
全く進展のない会議の原因の項が個人的に勉強になった。

●第3章『人をコントロールする心理術』

人気芸能人の秘密、一時的な人気で終わってしまう芸人、一時的流行アイテム、占い師の番組はやらせだけで済ませられない、といったところを心理学的に説明。なかでも飴と鞭の実験は目から鱗が落ちた。

●第4章『人をトリコにする心理術』
人のホメ方、好きという感情はどこから来ているのか、人々を魅了する簡単な法則みたいなことが書かれている。こう書くと胡散臭いなぁ、と思うが、実際の実験結果を用いた内容故に信頼性は高い。
ただ、自己知覚理論の実験についてが少し理解しづらかった。最新の心理学と書かれているあたり、本書に書かれていないが実はあまり確立した理論ではなかったりするのかなぁ、と。
失礼、素人の邪推であって専門家の書籍が正しいのは確かなのだが。この辺りは他書で詳しく知りたいところだ。


タイトルの『シロクマのことだけは考えるな!』に関係した項は第1章の最初の方だけで、その後は至ってありがちな心理学的人心掌握や著者の専門分野である認知心理学に関連した内容。
しかし、一般向けの心理学関係の本を読みあさっている私でも、まだまだ知らない実験や効果や現象もあり、読んでいて面白かったし、自分用の辞書に追記する事柄も多かった。

余談ではあるが、あとがきにあるような、昨今の心理学に対する負のイメージ(胡散臭い、占いと同じ)を危惧している著者の気持ちは自分も同意したい。
これだけ熱心に心理学本を読んでいるだけに、そろそろ私もカジュアルな心理学でなく本格的な心理学の学術書を読んだ方がいいかもしれない・・・・・・。

200ページ程度でこの価格帯のくせに満足感たっぷりの内容。しかしまぁ、こんな(よくある)シチュエーションではこの心理術が役に立つ、といった内容のため、広く浅い感じがあるのは仕方がないか。


評価:★★★★☆


シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)
「シロクマのことだけは考えるな!―人生が急にオモシロくなる心理術 (新潮文庫)」
 [文庫]
 著者:植木 理恵
 出版:新潮社
 発売日:2011-06-26
 価格:¥ 380

 
恐ろしきゼロサムゲーム


クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

出版社/著者からの内容紹介

戦慄の新感覚ゲームノベルが、新装丁・コレクターズアイテム版で再登場!!

藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ?傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」



これまた十年ほど前に読了した貴志祐介氏の名作を再び読んでみることにした。私が貴志祐介ファンになった要因の一冊でもあった記憶だけは残っている。

わけもわからぬまま火星のような地形に放り込まれた主人公。同じ境遇の数人の人間で繰り広げられるゼロサムゲームの様相。
といったありがちな設定。
食糧?サバイバル用具?護身用具?情報?あなたはこの状況で何を求めるか。そこで得たもののやりとりの中で、次第にお互いの溝が深まる。
個人的にこういうクローズドサークルは連続殺人ものよりも好きである。

とは言え、ルールなどの設定が面白さに直結するため、その点が読者にとっても合う合わないがでそう。

その上、この著者お得意の取材力。今回は民俗学や動物や昆虫、ボーイスカウトの知識といった部分が濃い。ストーリーのバックグラウンドには欠かせない点である一方、クドいとも取れるのがやはり貴志祐介節か。
本作では個人的にそういった点での展開の中だるみが感じられた。

結末。途中から察しのいい人はわかるかもしれないオチ。真相の部分はホラーなので置いておいて、恐怖面での面白さはと言われると、なかなか絶品。
ただ、その恐怖に単調さが出ているかな、と辛口な評価をしてみる。特に後半に差し掛かるにつれて、同じ質の恐怖が淡々と続くため、「わかったから、それで結果はどうなるの?」という冷めた目で読み進めていく要素となった。

サバイバルや生物学などに関しての取材のすばらしさはある。
だが、サバイバル要素は生き抜くための臨場感、必死な姿こそ描いているが、この作品の面白さや恐怖にはあまり直結しないこともある。舞台としてはそういう設定でなければならないものだが、そこを掘り下げすぎて個人的にはクドく感じられた。

確かに恐ろしく、確かに面白いのだが、どうしても『天使の囀り』『黒い家』と比べて見劣りしてしまうなぁ、といったところだ。


評価:★★★★☆

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)
「クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)」
 [文庫]
 著者:貴志 祐介
 出版:角川書店
 発売日:1999-04
 価格:¥ 700
 

 
もう少し純度を上げて欲しい・・・・・・


20代のいま、やっておくべきお金のこと
内容(「BOOK」データベースより)
若い時からお金のことを考えておかないと、人生やりたいことがやれなくなる。普通の収入で、退職までに1億円貯めよう。







投資や資産運用について数年前から勉強し、悪戦苦闘もしている私。ある程度の資産運用のプランが立ちつつあるが、その見直しや別の著者の意見も聞いてみたいという思いで本書を手に取った。
著者はファイナンシャルプランナーであるため、そのあたりは専門家として信用してもいいだろう。


●プロローグ

『若い時からお金のことを考えておかないと、人生やりたいことがやれなくなる。』がテーマ。
お金に対して20代から考えておこうという提案。結婚や共働きかどうかに分けてライフプランを考え、どういったお金の使い方になるかを著者なりに推測したものを紹介。
正直、例となるライフプランがこの世界でどれだけの人間に当てはまるのか、というと大半はそうならないであろう故に役に立たないと思う。導入部として考え方を知るだけ、といったところか。

●第1章『お金の基本』
『今からお金のセンスを磨いておこう!』がテーマ。
銀行の手数料、車のローンや年金といった実用的な人生に絡むお金の考え方を紹介。客観的な意見であり、的を射ている。

●第2章『生活とお金』
『節約はせこい!と思うのは、大いなる勘違い。生きたお金の使い方をしよう!』がテーマ。
生活面におけるお金の使い道について著者なりのアドバイスをしている。FPとしての役に立つ助言と言うよりは著者の価値観がそのまま出ている印象を受けた。『男は車を持ちたがり、女は車を持つ男が好き』といった記述などは特にその筆頭で、現代社会というよりは、少し時代後れではないだろうか。
節約面で勉強になることこそあるが、著者の価値観に賛同できない面も多かった。

●第3章『仕事とお金』
『最後に残るのは自分が稼いだお金だけ。仕事で実力をつけることが、お金を貯める近道!』がテーマ。
20代のうちにどういった仕事をして、今後どうするのがよいかといったアドバイスをしている。しかし、お金のことと少し離れた普通の自己啓発書といった内容が多く、凡庸。著者の経験や著者の周りから影響されたアドバイスのため、著者に身を預けてもいいと思うような人でないと、あまり良い内容でないと思う。少なくとも、お金を払ってまで読みたい内容ではない。
それに、就職難のこの時代では真に受けると痛い目に遭いそうという思いが強いのもある。じり貧な考えでは幸せになれないという点では同意だが、失敗することも考慮しないといけないとも思う。20代でのその失敗が今後活かせればよいが、世の中そんなに甘くないかと。

●第4章『貯金とお金』
『25歳で貯金0でも、これからきちんと貯めれば、1億円の道が拓けている!』がテーマ。
ようやく本題といった感じ。これまでの一般的な人生観とお金の話から、一歩踏み込んだ資産運用の話へと転換する。FPである著者が薦める貯金方法などを紹介。
私は株やFX、投資信託などさまざまな本を読み、実践しているので、すんなりと理解できるが、投資絡みについて1から知りたい人にはいまいち実感できない話で、もしかするとどういったものなのか理解に苦しむ点もありそうだ。

●第5章『自己投資とお金』
『お金は自分にも投資しよう。だけど自己投資費を飲み代と勘違いしないこと!』がテーマ。
自己投資、つまり将来の自分に向けた成長するための投資とお金についてを記述。著者の価値観がそのまま出ている上に、大方、「そりゃそれができたらその方がいい」というようなものばかり書かれている印象だった。しまいには、「こうした方がいいでしょ」と価値観を押しつける形の言葉も散見される。
共感できる部分はあるのだが、この著者の人生から得た教訓を反映しているだけにしか見えず、専門的なお金の使い道等の意見は期待できない。

●第6章『結婚とお金』
『1人より2人のほうが貯金も夢もずっと大きくなる。』がテーマ。
結婚についてリスキーと考える見方も増えてきた昨今、結婚とお金についての話を取り上げている章。まだ私には遠い話になりそうなので、耳年増にはなりそうだが、実感が沸かない部分を納得できる面は多かった。自分は保険について無学なので、保険の入り方については参考になった。

●第7章『将来とお金』
『将来のことを頭の隅に置きながら、お金のことを考えていこう!』がテーマ。
家のローン、子どもの教育費、生命保険といった将来像を考慮しながらのお金のやりくりについて述べた章。ライフプランを10年後まで考えておく姿勢で、将来を見据えた苦しくないお金の使い方を提案。年収と比べた上限額の設定など、活用できる点、参考になる点は多い。

●第8章『老後とお金』
『老後のことはまだ考えなくてもいいけど、その時のために準備しておかなくちゃいけないことはある。』がテーマ。
20代で老後のことは考えなくてもいいが、40代までにはその土台を作っておきたいという点から、年金の扱いや20代で積み上げるべき財テクについてを語っている。


全体的に、期待していた内容とは違った。
FPである著者の資産運用のテクニックなどを書いていると思い、買ってしまったが、中身は別にFPでなくても書けるような典型的な自己啓発の部分が多い。
たしかに、第4章や、お金の使い道、口座の分け方積立て方といった部分はある程度の専門性を含んでいて参考にはなるが、資産運用関連の他書でもっと詳しく書かれていることだと思う。
さらには、「海外に出て違う世界を見よう」とか「独り暮しは~歳までにするべき」といったような、それができたらそうした方が自分の身になる至極当然な自己成長を推してくるところがいただけない。タイトルと異なり、いまいちお金面との関連性も薄い。

第4章、第6~8章あたりは読んで勉強になる点があるが、それ以外はどちらかというと著者の人生観が表れていて、理想論のような部分や手放しで賛同できないことが多かった。
もう少し保険加入や投資面のより具体的なアシストの分量を増やし、財テク部分に力を入れて欲しかったところ。本書は、著者の個人的な人生観とFPとしてのアドバイスが混在している形に見える。書かれていることに大きな間違いはないが、「おぉ、素晴らしいことが書かれてある!」と喜ぶことはできない。

ジャンルは一応資産運用に含めておきます。


評価:★★☆☆☆
20代のいま、やっておくべきお金のこと
「20代のいま、やっておくべきお金のこと」
 [単行本]
 著者:中村 芳子
 出版:ダイヤモンド社
 発売日:2004-05
 価格:¥ 1,260

 
最高、最高、裁判所。

13階段 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。




江戸川乱歩賞受賞作。映画化もされている作品だが、巻末の解説からも察せられるように、映画の方の出来はあまりよろしくなかったらしく、原作を読んでおくべきらしい。
文章は、表現力よりも理論で押す感じの作家かな、という印象です。

タイトルのインパクトもそうだが、序章を読んだだけで、ぐっと引き込まれる設定にワクワクしながら読みすすめることができた。

やはりというべきか、こういう殺人事件や訴訟が絡む遺族や加害者関係者の話になると、マスコミの無神経な報道による苦悩が焦点にもなる。本書のように、加害者が冤罪や必要以上の量刑を受けることになった場合は尚更で、報道が招く世間からの目によってそこまでかという悲劇的な現実が待ち受けるものだ。
そういった社会派小説によくある部分もそうだが、肝心なのは事件とその調査の話。
刑務官が仮釈放中の前科を持った青年をつれて、とある事件の冤罪を晴らす調査に向かう。その冤罪を被った容疑者は事件前後の記憶が「死の恐怖を感じながら階段を上っていた」という部分しか残っていないという後遺症があるため、真相の究明が難しい状況となる。
誰もが頭を抱える事件の内容もそうだが、なぜ刑務所から出所したばかりの青年に協力を頼むのか、といった点を始め、読者が疑問を抱くポイントがところどころ出てくるところがまた面白い。どういう話に持っていくのか結末を少し妄想しながら読みすすめていける、よいミステリーだ。

序盤からの引きつけと展開はよかったが、四章『過去』の部分で個人的には失速。基本的に刑務官の仕事や死刑制度のお勉強パートという感じ。
無論、そこに登場人物の感情や決意などが書かれているのだが、過去の回想は長ったらしくなると面倒というのが私的な感情だ。とはいえ、四章自体こそ長いが、回想はそれほどでもなかったので、だれるほどではなかった。
そして、真相は遙かに複雑であり、伏線もばっちりの完成形と言いたい。すごいの一言です。読後感の何とも言えない気分は、作品の掲げている問題を考えさせられるからかもしれない。

また、巻末記載の参考文献の多さには驚く。これほどまでに下調べをしないと書けない力作だろう。
とにもかくにも、法律等の問題、動機、犯行方法、さまざまな点で完璧に塗り固められたプロットを見せてくれる素晴らしい作品だった。

某第55回江戸川乱歩賞受賞作にがっかりした江戸川乱歩賞作品だが、本書はこういうのを求めてたって感じで痛快です。


評価:★★★★★
13階段 (講談社文庫)
「13階段 (講談社文庫)」
 [文庫]
 著者:高野 和明
 出版:講談社
 発売日:2004-08-10
 価格:¥ 680
 
 
Copyright © めざせインドアマスター All Rights Reserved
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]