文化祭を楽しむ。
内容(「BOOK」データベースより)
待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。
それだけの作品。
本作は、
主観が古典部の四人で入れ替わる群像的構成になる。
個人的には前作までの折木視点に満足していたので、伏線などの具体的な理由がなければ要らないかなあ、というのが正直なところ。まぁ、ただの思い付きで変えるわけもないであろう。
しかしまぁ、前半。文化祭を楽しむ古典部四人の姿が表現されているのは素晴らしいが、ミステリー要素がとても薄い。ほぼ無い。
青春ミステリーから青春群像へと転換したのではないかと思うくらいだ。ミステリーらしい謎解き事件は前半からも垣間見えるが、本格的に解決に向かって古典部が乗り出すのは後半から。
文化祭の楽しみをとても上手く表現できているが、ミステリー部分を期待していた自分としてはスタートが遅すぎた。前作
『愚者のエンドロール』にあるようないろいろな推理の検討もない。
とにもかくにも、
ミステリー要素が薄く、高校生の生活を描いた青春群像の要素が強い。もとからこういう毛色を目指していたのかは不明だが、前作を読んでいると、少し残念だ。
最後まで読んだ感想。
残念。群像構成の理由も折木奉太郎が動かないため、という点が強く、あえて今までの構成から変えるほどの面白い話が待っていたわけではなかった。この構成にしたことで、たしかに各キャラの心情が如実に表れているにはいるが、それだけ。
事件についても、結末に悪い意味で唖然。キーとなるのは犯行の意図だが、この事件を起こす理由としては弱いし、学校が注目したからいいものの、注目しなかったらと思うと目も当てられない。
ミステリー要素を期待して読む人は間違いなくガッカリする作品だろう。
かと言って、青春ものとして読むにはドラマが足りないかと。
文化祭の盛り上がりはとても上手く表現できていたとは思うが、それだけではつまらないというのが感想。
評価:★☆☆☆☆
米澤 穂信
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