優柔不断でヘタレ、自分に自信がない
内容(「BOOK」データベースより)
天才棋士が初めて大公開!「決断力」「集中力」の極意!「勝つ頭脳」は、こうして決断する。
そんな貴方に。
誰であれ、業界でトップクラスの実力者が語ることは、何事にも代え難い独特の説得力を放つものだ。今回は将棋界で知らない人はいないであろう羽生善治氏の本を手に取ってみた。
テーマは決断力。人生、勝負所は何にでもつきものである。試験、就職、ビジネス、恋愛、etc。
その勝負所での集中力、決断力、メンタル面の重要性は、自分でも理解しているつもりで、本書は羽生氏の意見を拝聴するに適した本であると思った次第だ。
成功者の説教、自慢話なんじゃないの?なんて僻まず参考にすべし。
章立ては以下の通り。
●第一章『勝機は誰にもある』
章題に『勝機は誰にもある』ととあるが、あまりそういったまとまりではない気がする。
勝負する力について言及していて、その力の出し方を教えてくれるといった感じか。
なかでも『経験には「いい結果」と「悪い結果」がある』という部分に強い共感を覚えた。経験することの悪い側面に怯えてしまう自分に活を入れたい。
●第二章『直感の七割は正しい』
直感のすばらしさを説く章ではあるが、
個人的には、リスクを恐れて決断できないことや行動できないことに対する考え方が、とても勉強になった。『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』ということわざは初耳にして、ひどく感銘を受けてしまった。同時に、『自己責任』の言葉が渦巻く社会に対するアフォリズムには頭が下がる。
●第三章『勝負に生かす「集中力」』
集中力についての考え方を記している。
『集中するために頭を空っぽにして、将棋については考えないようにする』という羽生氏の姿勢は、いろいろと考えすぎて雁字搦めになってしまいがちな人に対する実に的確なアドバイスだ。
●第四章『「選ぶ」情報、「捨てる」情報』
コンピュータやインターネットの普及に伴い、情報だらけの社会になった。全てを拾っていくのは人間の頭ではもはや不可能と言える。賢い生き方、決断の仕方は、どれを選びどれを捨てるかだ。この章では、そういった事柄について書かれており、
最先端の将棋や昔の将棋、コンピュータ将棋といった話も出てくるので興味深い。
●第五章『才能とは、継続できる情熱である』
主張は章題の通りであるが、あまりにその通りすぎて人生論として確立すべき内容じゃないか、と思うほどだ。
本書にもあるとおり、努力は報われるわけではない、だがそんな中でモチベーションを保ち向上心を保ち続けることこそ才能なのだ。また、モチベーションの保ち方から、その点を踏まえた子どもの育て方まで書かれている。
将棋に対する見方が変わったというのが感想。将棋の中には様々な考察、心理、決断があり、それを取捨選択している。プロでさえ、それは網羅できず、曖昧模糊とした部分とも戦わなければならない。定跡だけが将棋ではないし、経験を積んだ年配だから強いというわけでもない。そんな
将棋の魅力が本書からは伝わってくる。
将棋は、ただのお遊戯ではないということは理解しているつもりだ。
私は囲碁や将棋こそ触れていないが、流行の対戦型格闘ゲームなどはプレイしている。一見、ただのお遊びに見えるそういったゲームでも深く研究すればするほど、対戦すればするほど、似たようなものを感じる。全国で名を馳せるプレイヤーの対戦を見ていても、緊張感やそれぞれの意志が伝わってくることだってままある。
歴史やゲーム性(戦略性)の深さについてはさすがに将棋に軍配が上がるが、勝負事という点では同じであり、様々な要素が絡んで人間の意志がゲームを動かすということについても全く同じだ。非常に共感できる。
こういった勝負事に限らずとも、勝機を掴むこと、決断すること、そこまでの過程に対する考え方は人生の何事にも応用できる。
本書は、『決断力』というタイトルだけに、
決断することの重要性はもちろん、決断することの恐怖や葛藤、他の選択肢を切る勇気など様々な要素を語っている。
新書サイズでこれだけ感想が書けるということは、それほど中身が濃く、共感できたという証拠だろう。私が購入したとき、40万部突破と帯に書かれていたが、この人気は伊達じゃない。
評価:★★★★☆
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