やりたい放題! の割にしっかりしてた!
内容(「BOOK」データベースより)
青春を、おかしくするのはつきものだ!阿良々木暦が直面する、完全無欠の委員長・羽川翼が魅せられた「怪異」とは―!?台湾から現れた新人イラストレーター、“光の魔術師”ことVOFANとのコンビもますます好調。
西尾維新が全力で放つ、これぞ現代の怪異!怪異!怪異。
マニアックなネタや、Hなネタがふんだんに盛り込まれた、ヒロイン達と主人公のボケとツッコミ小説、化物語。
綾小路きみまろにも引けを取らない言葉遊びには、つい顔をほころばせてしまう。
あとがきにおいて、これは趣味で書いた、と公言しているのも頷けるほど、非常にやりたい放題な仕上がり。とは言え、それが欠点な訳ではなく、昨今、人気を博しているのが何よりの証拠。
読み終わった後も、プロットが薄っぺらくなく、練り込まれた作品であると実感した。
下巻では、二つのストーリーが収録。
・なでこスネイク
下巻の最初と言うこともあってか、今までの経緯や登場人物の紹介的要素が強く、出だしは重たく感じた。
ヒロインの撫子(なでこ)は、前巻までの登場人物とは違い口達者な人物ではないため、人物同士の会話で話を進めるスタンスのこの作品では既出のキャラクターが会話を補うことになる。
その会話内容が、どうも今までと同じ夫婦漫才風味なので、マンネリ感を感じずにはいられなかった。
地の文が主人公のモノローグ形式という点も災いし、撫子の心境を描く点が希薄な印象があり、この話だけを見るとイマイチというのが本音。
ほとんど概略だけで終わってしまった感のある撫子のエピソードは後に描かれるのかも知れないし、掘り下げる気がないのかも知れない。
・つばさキャット
下巻の後編。
初めの方は、怪異面はあまり関係なく、ヒロインたちとのふれあい。
今までのようにほぼ雑談をしているだけといったマンネリはあまり感じず、話の締めに入ってきてるなぁ、という印象。
話だけでなく、いろいろと展開もある。主に、恋人関係になったにも関わらず特に進展の無かった二人について。
最後の締めに入ってくる盛り上げ方がよかった。わざとらしいくらいの典型的ドラマティックな展開は、王道にしてやはり素直に感動してしまう。
あぁ、ラストなんだなぁ、と思うと、登場人物たちとのやり取りに、「これで終わっちゃうのか」と別れを惜しむ気持ちが芽生えてしまった点、この作品は自分にとって合っていたのだと思う。
話としても、これまでの短編のように怪異と出会い解決する、というだけでなく、怪異という存在、怪異と出会い接すること、忍や忍野、章題にもある翼などの登場人物のバックボーンや深層心理についても、回収して完結させる。(GWの話などは概要に留まるが)
これだけやりたい放題な文章を書いておきながら、やりたいだけ、といった印象のないしっかりした世界観を構築している点は素晴らしい。
総観としては、非常に満足。
というのも、つばさキャットで見事におさめてくれたのが個人的評価に繋がった。広げた風呂敷をしっかりたたんでくれた、という点で安心。
春休みやゴールデンウィークの話は未回収気味だが、続編にて回収されるようなので、問題なし。
読後感もすがすがしく、まだまだ彼らの生活を見ていたい気分になりました。
こんな青春があったらいいなぁ、なんて思っちゃいます。
評価:★★★★★
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