カツ丼から始まる青春
内容(「BOOK」データベースより)
男と女。彼氏と彼女。親と子供。先生と生徒。爺ちゃんと婆ちゃん。世の中には、いろんな人たちがいる。そこには、「ダメ人間」と「しっかり人間」なんてのも。それぞれ“事情”を持つ彼らが描く恋愛&人生模様は、ありふれているけど、でも当人たちにとっては大切な出来事ばかりだ。そんな彼らがある日、ひとつの“糸”で結ばれる。とある掲示板に書き込まれた「カツ丼作れますか?」という一言をきっかけに。日常系青春群像ストーリー。
読んだ作品こそ少ないが、おそらく好きなジャンルであろう青春群像を読みたいと思い、手に取ったこの本。作者の入間人間氏はライトノベル畑の身で、なかなかの人気を博している。
ライトノベルこそ追いかけるのがしんどいが、最近アスキーメディアワークスは本書のような対象年齢を大人向けにしたようなライトな小説を出版しているようで、一冊完結型なのが個人的にはありがたい。
構成は連作短編。あらすじにあるように、
「カツ丼作れますか?」という掲示板の書き込みをきっかけに始まる様々な人物の日常を描いた青春群像というわけだ。
●『プロローグⅠ』
●第1章『While my guitar gently weeps』
ギターの弾き語りを下手の横好き(?)でやっている夢を追いかけるダメ人間の女性と、同棲しているしっかり者の男性の物語。あぁ、青春。これぞ青春。こんな大人がいてもいい、こんな関係があってもいいじゃないと思う。
●第2章『生きてるだけで、恋。』
家業の食堂で手伝いをしている女子高生と、万引きを犯している男子高生の物語。ザ・青春。こんな高校生活を送りたかったという言葉を代弁してくれるような暖かい絆だ。万引きはよくないけどね。
●第3章『パタパタパタ』
家出を目論む小学生男女の話。取っつきは良かったけれど、短い話で、何とも言えないですね……。小学生とかこんなモノって感じなのかと。
●第4章『愛とか祈りとか』
二十代で同棲しているニートの男女の話。これまた短いが、暖かいお話になっている。
●『プロローグⅡ』
●第5章『老人と家』
妻を亡くしたとある老人のお話。今までに登場したとある人物と関わることで物語が始まる。一人称視点の地の文が懐古的なのはよいが、いまいち老人らしさを出し切れていない感じがした。
●第6章『Q.これはオフ会ですか? A.いいえ、カツ丼です』
これまでのストーリーを包括してオチとして締めくくる。
●エピローグ『What a Day』
なんともくどい言い回し、表現がライトノベル作家という感じで、苦手な人は苦手だろうなあ、と思う。この文章表現がかえって青春群像の登場人物とマッチしていていると感じた部分もあるが、やはり
過剰表現が少し鼻に付く。
青春群像の基本と言うべきか、それぞれ一人称視点で進み、独特の価値観や哲学に則って、いろいろあれこれと考えながら生活している様子が窺える。また、群像ものなので、ところどころ、関係のない別の登場人物の様子を見たり、その人の影響を受けたりといったことも見られるので面白い。
日常系ということもあり、
大きな山場こそ無いが、一つの街を舞台にした様々な人物の生き様などをうまく描きあげ、しっかりとした結末にジーンと来る場面も多々ある。完成度は高い。
青春群像を求めるならば読んでいて損はないはず。
評価:★★★★☆
入間 人間
アスキーメディアワークス
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