考えるなよ!絶対考えるなよ!
内容(「BOOK」データベースより)
「シロクマのことだけは考えるな」、この心理学の著名な実験があなたの悩みを解決してくれるかもしれません。いますぐ忘れたい辛い恋、成果のない合コン、ギクシャクする上司との関係、どんなに頑張っても幸福感のない日常―あらゆるシチュエーションで私たちがぶつかる問題を気鋭の心理学者が分析、ベストの対処法を教えます。
タイトルのひねり具合に思わず気になってしまう本書。
シロクマとはなんなの?と多くの人が思ったはず。心理学関連の本を読んできた自分には「あぁ、これね」と思ってしまうほど
よく取り上げられる有名な実験を筆頭に、人生を変える心理術と称した本である。
●第1章『元気になる心理術』
タイトルにもある、
シロクマ実験から考えられる人間の心の働きを利用し、元気になる心理術を紹介する。
失恋、仕事の失敗などの傷心やパニック障害まで様々なものに対処できる方法と言える。
また、コントロール・イリュージョンやストレスマグニチュードといったところにも触れ、人間の心の弱点、傷心やストレスを分析し、その対処法を教えてくれる。
●第2章『頭がよくなる心理術』
自己愛、判断ミス、記憶違いなど様々な心理的要因による頭の悪い選択、錯覚を紹介。それらの行動や作用を自覚し、是正することで、頭がよくなるという章題の意味となっている。
『錯覚の科学』に通ずる部分もあり、軽く一般向けにまとめられている。
全く進展のない会議の原因の項が個人的に勉強になった。
●第3章『人をコントロールする心理術』
人気芸能人の秘密、一時的な人気で終わってしまう芸人、一時的流行アイテム、占い師の番組はやらせだけで済ませられない、といったところを心理学的に説明。なかでも飴と鞭の実験は目から鱗が落ちた。
●第4章『人をトリコにする心理術』
人のホメ方、好きという感情はどこから来ているのか、人々を魅了する簡単な法則みたいなことが書かれている。こう書くと胡散臭いなぁ、と思うが、実際の実験結果を用いた内容故に信頼性は高い。
ただ、自己知覚理論の実験についてが少し理解しづらかった。最新の心理学と書かれているあたり、本書に書かれていないが実はあまり確立した理論ではなかったりするのかなぁ、と。
失礼、素人の邪推であって専門家の書籍が正しいのは確かなのだが。この辺りは他書で詳しく知りたいところだ。
タイトルの『シロクマのことだけは考えるな!』に関係した項は第1章の最初の方だけで、その後は至ってありがちな心理学的人心掌握や著者の専門分野である認知心理学に関連した内容。
しかし、一般向けの心理学関係の本を読みあさっている私でも、まだまだ知らない実験や効果や現象もあり、読んでいて面白かったし、自分用の辞書に追記する事柄も多かった。
余談ではあるが、あとがきにあるような、昨今の心理学に対する負のイメージ(胡散臭い、占いと同じ)を危惧している著者の気持ちは自分も同意したい。
これだけ熱心に心理学本を読んでいるだけに、そろそろ私もカジュアルな心理学でなく本格的な心理学の学術書を読んだ方がいいかもしれない・・・・・・。
200ページ程度でこの価格帯のくせに満足感たっぷりの内容。しかしまぁ、こんな(よくある)シチュエーションではこの心理術が役に立つ、といった内容のため、
広く浅い感じがあるのは仕方がないか。
評価:★★★★☆
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