はい、軽くなりました!
内容(「BOOK」データベースより)
うつに向かいそうな重い気分、暗い気持ちを切り替えて、前向きに生きるにはどうすればいいのか。すぐにネガティブ思考に陥ってしまいそうな時代の「今を生きる力」を、10のヒントとしてまとめた。
精神科医である著者名越氏とインタビュアーとの対談形式の構成。amazonでのレビューも良さそうだったので、安心して購入。
タイトルに心理学とあるが、心理学面もそうだが精神医学的内容も多い。臨床心理学的な患者(クライアント)の心の動きを鋭く分析している印象を受けた。
章題は以下の通り。
●第1章『閉塞感が増す時代の「今を生きる力」』
<①自殺が増えるなど、なぜ日本人の心は疲弊しているのか>
<②閉塞感が充満する日本で、どう前向きに生きればいいのか>
出だしは思った以上に
社会学チックな内容だった。精神医学や臨床的な内容ではなく、なぜ今の日本がこうなっているのか、ということについて考えてみたような内容である。ただ、徐々に心の話へと展開する。
精神的に参っている時、「社会が悪い」「世の中が悪い」といった、甘えと言われそうな言い訳をしたくなる人も多いと思うが、この章にはそのヒントが示されている。
たしかに、
章題にもあるように名状しがたい閉塞感、息苦しさが今の日本にはあるかもしれない。そんな中で、著者がいう損得勘定に囚われず今を生きるという発想は、個人的にかなり心を軽くしてくれた。
●第2章『心が弱っていると思った時、うつに向かわないために』
<①誰にも相談できない状態の時、何を考えればいいのか>
<②何をしていてもネガティブな考えになる時、どうすればいいのか>
<③心の幸福を保つためには、どう心がければいいのか>
さすが精神科医、
うつ病やプチ鬱といった誰でも起こりうるネガティブ思考や悩みをことごとく理解している印象を受けた。『ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいる状態』など目から鱗が落ちるような的を射た表現だと思う。また、
素人では到底理解しきれない、していても的確な対応ができず、いい加減な助言をしてしまったりする部分を指摘し、その対処法も著者なりに考えている。
「浄化作用が強迫観念的になるのでは?」というインタビュアーの質問は、プロのインタビュアーだなぁ、と。
●第3章『人にとって働くこと、生きがいとは』
<①仕事が面白くない時、どう向き合えばいいのか>
<②コミュニケーションがうまくいかない時、どうすればいいのか>
<③夢や希望が描けない時、何を考えればいいのか>
社会人になってから、またはなる前から、
「なぜ働くのか」「仕事がつまらない」「自分が本当にやりたい仕事は何だろう」「自分は他人に比べて損している」と思うことが少なからずあった。おそらく私だけでなく多くの人がそうだろう。
そういった時どう考えるのがベターかを考察している。
また、ヒント②にあった、職場にいる嫌いな人との付き合い方、自分の心の整理の仕方も参考になる。
一方、ヒント③については、ただ本書の要点でもある『今』を意識すること以外あまり記憶に残らない内容だった。
●第4章『せちがらい社会を生き抜くために』
<①絶望的な時に投げ出さないためには、どうすればいいのか>
<②前向きに生きていくには、何をすればいいのか>
まず、
『絶望』と『絶望的』の違いを説明し、開き直るなどの心の動きを挙げる。ヒントにもある通り、
前向きに生きるためにどうするべきか、といった部分を少しの具体例と共にアシストしてくれる。当然ではあるが、結局は本人の問題になる。
よくネガティブ思考に陥る、鬱っぽい、むしろうつ病なんじゃないの?と思う人は必見。そんな時の心の整理方法、考え方、ネガティブに考えないための方法などを書いている。
こう書くと、「はいはい、『気分転換しなさい』とか『自分のよいところに目を向けなさい』とか『ゆっくり焦らず自分と向き合いなさい』とかそんなとこでしょ?」と思うかもしれないが、そんなアドバイスはド素人。詳しくは本書を読んでいただきたい。
今まで読んだような癒し系な書物とは一線を画し、うつ病の構造、ネガティブな気分を徹底的に研究し分析できている感じがする。気休めの言葉などではない本当の処方箋。対症療法ではなく原因療法と思わせるような、そう思わせるほどだった。時折気分が沈んだり、もともと気分の浮き沈みがあると自覚している自分にとって、これは何度も熟読する価値がある。
あえて批判するならば、「姑がうざくて仕方がない・・・・・・」「学校でいじめを受けている・・・・・・」といった
具体的な悩みにはあまり対応していない。第3章では職場絡みの陥りがちな悩みやネガティブ思考を述べているが、その程度。
個々の悩みを一緒くたに考えることはできないので、本書では触れることはできないのだろうが、その反面、上記のように
漠然としたネガティブ思考、抑鬱状態などにはよい本だ。
また、本書でも触れられているが、結局は自分自身の心の問題故に、本書の内容を読んだところでそれを実践し快方に向かうかどうかは本人次第である。本書の内容が心に届き、実践できる程度の心の余裕は必要となるはずだ。
章題や各章ごとに記されたヒントに惹きつけられる人は是非購入を検討して欲しい。
評価:★★★★★
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