男は女の・・・・・・
内容(「BOOK」データベースより)
本書で明かす事実その1「初対面で、女は男の顔よりも指を見る」。その2「ハゲの男は病気に強い」。その3「自分と違う免疫の型の持ち主ほど、匂いがいい」。その4「ピルは女の勘を鈍らせる」。その5「浮気で得をするのは女である」…数々の実験や最新データをもとに動物行動学で読み解く、「色気」「魅力」「相性」の正体。「遺伝子の企み」がここまでだったとは!次々常識が覆される高揚感あふれる一冊。
は、言わなくても分かりますね。
最近は生物学に興味を持ち始めた濫読気味な私。今回は書店で見かけた気になるタイトルと帯に惹かれたこの本。『男が女の胸や尻に目が行くように、女性は男性の指を見ている』といったことは何度も聞いたことがあるが、その点よりもむしろ外連味溢れる章タイトルに釣られた感じ。
動物行動学に精通している著者の本。一つ読んでみようと思う。
章題は以下の通り。
●第1章『人類最大の発明と繁殖の掟』
排卵の無自覚、常に膨らんでいるおっぱい、ペニスの大きさや太さといったように
他の動物と人間との違いを分析し、その原因や進化の過程についての言及から始まる。チンパンジーのような霊長類を比較対象の主とした研究結果を用い、
人間の生殖機能の状態を客観的に分析し、その原因を推察している章。
想像したくはないけれど、他の動物の驚愕の生態系も如実に語られている。
●第2章『女は男の指を見ている――Hox遺伝子の話』
本書のタイトルにもなっている本章。
ドーキンスの提唱した『利己的遺伝子』の話のような遺伝子論から始まり、男性や女性が異性を見るときに気になるパーツの統計を挙げ、指を見ることの意味や遺伝子と指の関連性に繋ぐ。
『はじめに』でも触れた、
薬指と人差し指の長さの比とその関連性についてもここで触れられる。しかし、この研究結果が本当であるならば、薬指にはすごい力が眠っている。勉強になった。
●第3章『ハゲの発するメッセージ――テストステロンの話』
これまでの章でも取り上げられている
テストステロンという男性ホルモンの力やハゲの要因とハゲの人の傾向といった風な内容。このテストステロンが人体、健康状態、生殖にどのように影響しているのかを論じており、去勢した人物なども対象とした研究結果を披露している。芸能人や有名人の例はいささか都合のよい解釈に思われるが、その点以外は納得がいく推論である。
●第4章『「選ばれし者」を測ってみると――シンメトリーの話』
『選ばれし者』つまりはモテる者を他の生物の研究を経て、法則性を見いだす章。軽く触った程度の内容だが、フェロモンやモテる要素といった部分について書かれている。
●第5章『いい匂いは信じられる――HLAの話』
HLAという抗原や免疫、フェロモンの話が主。こんなことだって実験としてあるんだよ?というだけで、「ふ~ん、それで?」という感想になる。目から鱗という程のインパクトはないが、フェロモンや匂いの原理は知ることができるかもしれない。
●第6章『浮気するほど美しい――浮気と精子競争の話』
浮気や寝取られの原理について人間はもちろん、他の動物からの研究結果を用い、論じている。浮気をすることで誰がどんな利益を得るのか、浮気が多い動物にはどういった共通点があるのか、といったことが書かれている。
●第7章『日本人はあえて「幼い」――ネオテニーの話』
ネオテニー(幼形成熟)は、人間全般、特に女性に強く見られるものらしく、他の動物(霊長類)との決定的な違いである。
この章では、特にこのネオテニーの強い日本人(モンゴロイド)の特徴を生物学の観点で指摘している。
インパクトのある話が多く、科学的根拠もある感じではあるが、
全体的に実験対象が少ないものが多く、統計としての信用性が低い感じがする。都合のよい例だけを挙げて述べられているとも取れる内容なだけに、いまいち真に受けられない部分が多い。
それにしても、全体的に何とも著者の主張成分が強い本。著者の推論が多いのもあるかもしれない。時折、冷静さに欠ける自己主張が繰り広げられている気もしたが、多分気のせい。
社会や心理面にあまり触れず、ひたすら(優秀な)遺伝子を残すことに焦点を当てた研究内容はさすが生物学と思える。その点は読む分には面白かった。
評価:★★★☆☆
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