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生物学の門を叩く


ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
内容(「BOOK」データベースより)
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。




そんな著作。
生物学関連の書籍では有名な本らしく、動物はサイズ(体重)によって時間や寿命といった部分が違う、という点が主な論題となっていると思い手に取ったが、中身はコテコテの生物学。タイトルに惹かれた人は容赦するべし。


●第1章『動物のサイズと時間』
本書のサブタイトル「サイズの生物学」の導入といったところ。体重やサイズによってこういったことが違っているのだ、という具体例を挙げ、以後の章に繋いでいる。

●第2章『サイズと進化』
ここでは、コープの法則や定向進化説といった進化の諸説についての説明と、その考察について、サイズの面で説いている。
本章を見ればわかるが、一般的に大きいことは環境の影響を受けにくく、体重等の関係で争いにも強い。しかし、大きいことがよいならば、どんどん大きな生物に進化していくだろう。そういったように、サイズの大きいこと、小さいことの利点と欠点を見ながら進化について論じている。
また、本章で取り上げられている『島の規則』は聞いたことがなかった上、人間の実生活にも当てはまるのではないかという考えは純粋に勉強になった。

●第3章『サイズとエネルギー消費量』
章題の通り、生物におけるサイズとエネルギーの消費量についてどういった規則性があるのか、という点を計算式などを用い、実験結果を提示している。ここから、心臓の脈打つ回数とそのエネルギー消費、表面積や体積といった要素がどのように関わりあっているのかがわかる。他にも、単細胞生物、恒温動物、変温動物の観点で体温の差と消費エネルギーについても考察している。計算式やグラフもあり、素人目にはなかなか本格的に見え、研究結果のまとめはともかく、研究過程の説明は難しく感じた。
なかなか興味深い結果が書かれているが、規則性のある結果こそ出ているが、その理由を説明できないため、教科書に載っていない内容だそうだ。

●第4章『食事量・生息密度・行動圏』
まずは生物の体重と比べた食事量。これは生物によって食糧の栄養価が違うため、摂取するエネルギー量で調べている。また、魚類、哺乳類なども区別した研究結果や食べた分のエネルギー消費の用途(成長・維持・排泄)の割合などが書かれている。やはりそれなりの規則性が見いだせられる。
また、草食獣、肉食獣の生息密度と行動圏についてもデータを提示。これまた、規則性があるので興味深い。

●第5章『走る・飛ぶ・泳ぐ』
動物の動物たる証拠、動くことについて研究した章。哺乳類、魚類、水中の哺乳類、鳥類、など様々な運動エネルギーを計測し、その結果を示している。なぜライオンは普段だるそうにしているのか、イルカはなぜ無邪気に泳ぎまわっているのか、といったところがわかってきてなかなか面白い。

●第6章『なぜ車輪動物がいないのか』
なんともそそる章題だが、結論は言われてみればいたって単純明快。この程度の回答が考え付かない自分の凡才ぷりに少し悲しくなったのであった。
また、水中でスクリューを使う動物や空中でプロペラを使う動物がいないのはなぜか、という点も考える。この発想自体が既に面白い。
ともあれ、人間の車輪を含めた産業についてまで見解を示せるところは、なかなか興味深い。


●第7章『小さな泳ぎ手』
ここでは鞭毛や繊毛を使って泳ぐ、精子やバクテリアといったとても小さな生物を取り上げている。鞭毛と繊毛の動きや形の違いや使い分ける理由、大きいサイズの生物が筋肉を使うようになった理由などを述べている。レイノルズ数を絡めた専門的な説明が続くが、そういった公式を理解しようとせずとも読める内容であり、慣性力と粘性力という働く力の話は知らなかったので生物の進化において少しそそる内容であった。また、拡散を利用するバクテリアの生態系も面白い。

●第8章『呼吸系や循環系はなぜ必要か』
生物に呼吸系や循環系の必要となる要素を研究。結論としてはやはりサイズが肝となる。あるいはサイズに焦点を当てて語っているだけかもしれないが、私にはわからない。

●第9章『器官のサイズ』
肺や心臓、脳などの器官と生物の体重や体積、表面積とはどのような関係があるか、という点を述べている。また、動物における建築材料と例えられる骨格についても触れている。ここでも、なかなか面白い規則性が見られる。

●第10章『時間と空間』
サイズと時間の関連性、一般論と動物学での時間の捉え方の違いなどが書かれている。分量は少なく、少し哲学的な話になっている。

●第11章『細胞のサイズと生物の建築法』
生物を構築する細胞の特徴をサイズを主としてまとめている。植物細胞と動物細胞の違いは、建築法で例える理由がわかりやすく、植物が動かない代わりにどういった構造をしているのかといった点でとても勉強になった。

●第12章『昆虫――小サイズの達人』
これまでの内容を統括した上で、昆虫という動物について研究している。クチクラの構造、肺や心臓といった循環系が無いのはなぜか、サイズの大きい昆虫がいないのはなぜか、エネルギー効率の悪い木の葉を食べることなどが書かれている。植物に含まれるセルロースを分解する酵素であるセルラーゼが進化しなかったのはなぜか、という点はなかなかロマンある研究課題かもしれない。

●第13章『動かない動物たち』
動物のくせに動かないものとして、主にサンゴを挙げ、その生態系について述べている。キーポイントは群体という観念。生物学に疎い私にもそれなりにわかる内容だった。

●第14章『棘皮動物――ちょっとだけ動く動物』
ウニやヒトデといった隠れもせず動きののろい動物を挙げ、その生態系を探る。この無防備な動きで捕食者からどうやって逃れてきたか、などよくよく考えれば一味違う動物だ。どうしてそのように進化したのかという謎について著者なりの見解も示している。ヒトデの体表や断面図などの写真は普段お目にかかれないのでなかなか面白い。


名著として耳にしたことがあり、生物学入門という謳い文句もあったので、気になって購入してみたが、さすが理系学問というだけあってか難しい部分がある。『心拍数一定の法則』や『島の規則』など結論だけを聞けば面白くはあったが、聞きなれない単語や研究(計算)過程を詳しく書いている為、どうしても流し読み気味になってしまうところがあった。
そもそもタイトルにそそられて興味本位で買った私にとっては、タイトルのような時間の違いに関する内容は少ししかなく、生物学の世界に踏み込んでしまい少し読んでいて苦しい部分があった。事実、上記の章ごとの感想もいまいち要領を得ていないかなと思う。全体的にCSのアニマルプラネットのようなドキュメンタリー色の強い、ジャンルも多岐にわたる生物学のまとめである。
数式、公式にアレルギーのある人は読んでいてつらいかもしれないが、大まかな内容を知る分には問題はないと思われる。

著者の書き方から察するに、ところどころ個人的な見解がある。学識として確立するには根拠の乏しいもの、証明しきれないものが多いのだろう。物理学で取り上げられる宇宙もそうだが、歴史の長い進化の過程を研究することの難しさを感じさせる。

おそらく、生物学に詳しかったり、根っからの生物学に興味のある方には期待に応えてくれる内容だが、私には少し内容が専門的に感じ、重たかった。とは言え、様々な動物の生態系を知ることで、普段気にしていない部分が改めて考えると謎に思えてきて、それなりに面白い内容ではある。


評価:★★★☆☆

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)」
 [新書]
 著者:本川 達雄
 出版:中央公論社
 発売日:1992-08
 価格:¥ 714

 
 
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