疾走感あふれる失踪
内容(「BOOK」データベースより)
迷子の親探しにいったまま、奈美が戻ってこない―誘拐か?旅行先で国分は青ざめた。空港や観光街で撮ったビデオに映る、奈美に視線を這わす男。予感は確信に変わった!国分は奈美の兄マモル、探偵の蓮見と手分けして探し始めた。事件の糸口を掴んだ蓮見は二人に連絡を取ろうとするが…。蓮見の行方、マモルの決意、国分に迫る影、奈美の生死は?息つく間もないシーンの連続。
なんちゃって。
『ノンストップジェットコースター・スリラー』とあるように、止まらないドキドキのサスペンスに仕上がっている本作。
タイの町並みや文化をよく表現していて、その良いところ悪いところの特徴を活かす舞台設定はなかなか惹きつけられる。なかでも、問題となるのは主に裏社会方面。
バンコクのバの字も知らない私には、「こんな危険なことが都市伝説とは言え囁かれているというのか?」という恐怖が植え付けられる。(まぁ、タイに限った事じゃないが)
主人公やその知り合いたちは、誘拐された恋人の奈美を探しているうちに、この危険な社会の闇に飛び込まざるを得なくなったというストレートな展開だが、これがまた面白い。
前作
『死亡フラグが立ちました!』もそうだが、ハードボイルドで都市伝説的な風味を混ぜるサスペンスが著者の好みなのかもしれない。前作のコミカルな感じを一切排除し、グロテスクな描写も遠慮無く使う緊張感あふれる作りは、「こんな感じの小説も書きたかったんだぜ」という著者のアピールを感じる。
話はスリリングではあるが、だいたい予想できてしまい、残念……と書こうとしたが、案外そうでもない。終盤の展開は少し斜め上を行っていて、
真正直に誘拐問題を解決して終わるだけではない様子になる。その工夫は賞賛したい。こうでなければ、スリリングな展開も予測可能なマンネリになって、スリルを感じなくなるというものだ。
だが、ノンストップジェットコースター・スリラーの売り文句こそ裏切らないが、なんというかスッキリさっぱりしない終わり方だなあ、と。著者はきっとこういう余韻を残した終わり方が好きなのだろうが、もう少し綺麗に締めくくっても欲しかったりする。
読者にとって想像を駆り立てられる終わらせ方にしたようだが、結局「こういうことなんだな」と思うしかないんじゃないかなあ。私の想像力が欠如しているのかもしれないが、1パターンしか考えられない。
そんなこともあって、結末部(第十章)は、この視点よりも、純粋に第九章と同じ視点で含ませずに進めた方が私は好きだったかな、なんて。それに、この展開だと「無理だからやめとけ」ってなりますし(笑
とまぁ、読んでない方にはさっぱりな感想を晒しましたが、
ハラハラドキドキするわりにカタルシスに乏しいスッキリしなさがあった、というのが総観。
生意気言わせてもらいましたが、面白かったのは確かです。
グロテスクが苦手な方は読まない方がよさそう。
評価:★★★☆☆