深い
内容(「BOOK」データベースより)
最後の貴族である母。私生児の母になり、古い道徳とたたかって生きようとするかず子。麻薬中毒によって破滅する直治。飲酒にふけるデカダン作家の上原。4 人の宿命的な生きざまが夕陽のような輝きを放つ太宰文学の集大成。
描写が深い。
初めの方の蛇の話を読んだだけで、やはり文才に恵まれた方は違うな、と実感する。
また、その表現力で描かれた、母を思うかず子の姿がとても印象的で、感情移入してしまう。
携帯メールによる短文での交信が主流の現代社会だが、この作品に出てくるような手書きの長い手紙を送ったりすることも趣深いな、と思ったり。いつでも気軽に送るわけではないし、一度送れば返事をまたしばらく待つことになる手紙という通信手段では、メッセージに込める思いや、こういう事を書こうという意思が強く表れるなぁ、とか。
そんなことをしみじみと思ってしまった場面もある。
一方、当時の感覚なのか、一文一文が長い。のは、わかりやすいので問題ないのだが、場面転換が急で困ることがある。
私の読解力が悪いのだが、何となく読んでいると、いつの間にか話が脱線していて、本筋を忘れてしまいそうになる。
言葉遣いや知らない文化(索引が付いている)などの感覚もあるが、少し現代作品との差を感じずにいられない。もちろん減点対象ではないが。
内容。
斜陽というタイトルが暗示する言葉の意味を深く刻んだ作品だな、というのが読み終えての感想。
登場人物の破滅や凋落、だけに留まらず、斜陽の鮮やかなコントラストを思わせる人生の顛末が見事に表現されている。
名著として名高い素晴らしい作品。
自伝色が強かった『
人間失格』に比べ、しっかり物語で『斜陽』を見せる表現力豊かな本作はまさに名作。
評価:★★★★☆