作者の心痛が伝わる作品
内容(「BOOK」データベースより)
「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていました。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性に関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。
作者なりに苦しんだ結果、遺書としてこの作品を残したとしか考えられない。
主人公と作者を重ね合わせて読むと、一層悲愴感が漂う。
彼の考えていることは、私たち人間全員にも少なからず当てはまる。
人間は皆、少なからず道化ているだろうし、少なからず自分の嫌な部分を持っていて、それを見ぬ振りをしたり、妥協したりするのではないだろうか。
作者はきっとそれが許せなかった。そんな自分が許せなかったのだろう。
考えれば考えるほど、突き詰めれば突き詰めるほど、自分を追い詰める結果になるのはわかる。
自分にもそういった経験があるからだ。
作者の心中を理解すると共に、この小説がただの小説ではない作品であることを実感する内容でした。
センチメンタルな内容だけに、私的感想もこんなになりました。
雑感としては一世代前の作品の割に読みやすいし、理解しやすい。名著として扱われているのも頷ける。
太宰は十代に読め、とか聞きますが、たしかに思春期に読めば一層心に残る作品ではないか、とも思う。
小説と言うより、自伝の色が強いので、その辺が好みの分かれどころか。
評価:★★★☆☆
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