歪んだ恋物語
アニメ化ということで……。
池袋に集まる様々な人物を描いた、同著者の作品『バッカーノ!』とはまた違う仕上がり。
情報屋、ストーカー女、巨漢黒人、闇医者、退屈な日常にウンザリしていた学生……。
首なしライダーの都市伝説を中心に、個性的な人物を次々と引きずり込む内容。
感想としては、微妙。
日常の中に潜む非日常といった世界観は悪くはない。私自身それが好きで、それに惹かれて手に取った本だ。
だが、いまいち特筆すべき面白い点が見あたらない。
話の展開、キャラクターの魅力、事の真相とそこへ持って行く構成。
私にとっては、これら全て及第点程度に感じ、むしろ山のなさを感じた。
次巻以降で、どんどん深みが増すのだろうか。
……というよりは、どこかで聞いた話が多すぎるのだろうか。もっとも、著者も『こんな映画みたいな展開が……』とか『こんな漫画みたいな話が……』とか『こういった話はよくある』といった地の文が盛り込まれている点、自覚しながらあえて書いているのだが、言い訳というか、その話に対するフォローに見えてしまう。
そういう作りは全然問題ないとは思うし、ありふれた展開を否定するわけではないが、どうもそういうところが多過ぎた感がある。
舞台となる街に(文章を通じて)読者も入っていく、という感じはあるのだが、どうも蚊帳の外な感じがある。
非日常を求める少年のどこに物語の中心になり得る求心力があるのだろう、と設定に疑問を思っていた点はしっかり回収してくれたが、なんだか仕上がりとしては物足りない感じがあった。
歪んだ物語、というキャッチフレーズを上手くまとめられていない印象がある。様々なキャラクターを描くため、右へ左へ寄り道して話の核が事実としてしか回収できていないというか
……。たしかに歪んだ感情の押し付け合いな内容なので、それに感情移入できなかっただけかもしれないが。
なんだろう、愛情をテーマにしているわりに、裏社会やいろんなキャラクターを描こうとしているためか、魅力が分散している印象。
ま、理屈で言うのは難しいので、とりあえず肌に合わなかったかなぁ、と。
一方、
作中に電撃文庫シリーズを盛り込んでくるなど、クスッと笑わせる試みが見受けられる点がところどころある。
なんか、そういうセンスは、自分が万が一小説を書く立場になったら、同じ事をやりそうな感じがするので同族意識が沸いて面白かった。
タイトルの由来は、あとがきを見ましょう。なかなか面白いです。
評価:★★☆☆☆
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