作り込みを感じるサウンドノベル
サウンドノベルの本家、チュンソフト。PlayStationソフト『街』を彷彿とさせる世界観で、久しぶりにやって来た。
まずは、話の内容。
渋谷を舞台として起こるとある事件。その中で、様々な登場人物が思わぬ形で交差する。全く関係のないと思われる人もストーリーに絡んできたり、全く関係のないと思われる誰かの行動が他の登場人物に深く影響したり、という具合に、点と点が線で結ばれるようなストーリーは非常に深遠。そのくせ、読者にわかりやすく書かれており、テンポも良くテキストも読み進めやすい。
コミカル成分もシリアス成分もあり、さじ加減も特に違和感もなく、いい感じです。
正直、私には退屈な部分が全くなかった。長編ものともなると、中だるみがあったり、つまらない部分があったり、とするものかと思ってはいたのですが、常に続きが気になる。どの登場人物においてもそうだった。
また、結末の予想などは到底できないような素晴らしいどんでん返しがあったり、と。
一流サスペンスではないか、と思う素晴らしい作品だった。
シナリオライターの凄さをまざまざと見せつけられた気分です。
ゲームシステム。
個性豊かな様々な登場人物を操り、事件の解決へと導く。この登場人物の入れ替え、ザッピングシステム。
ドラマでいうCMを挟むように、シナリオのちょうど良いところで『KEEP OUT(他の登場人物を読み進めないと先が読めなくなる)』になったりするので、このザッピングシステムを使い、このKEEP OUTを解く。
これは、続きが気になるので、どんどん読み進めたい!と私はのめり込んで行ったのだが、人によっては「めんどくせえ」とモチベーションを削がれるものになるかもしれない。
途中に選択肢があり、「もしここでこうしたら~」の結果が分かれてくるのはサウンドノベルの真骨頂。正しい選択を選び、事件を解決するもよし、わざとヤバそうな選択肢を選んでBAD ENDに興ずるもよし。
そのBAD ENDの量ですが、大量にあります。というか、選択肢を誤ると大方すぐにバッドエンドになります。正確には、そのキャラクターがバッドエンドになるのでなく、他のキャラクターが影響を受けてバッドエンドになることの方が多いか。BAD ENDの後にヒントがあるので、その通りに登場人物を導けば解決できます。
作業感はありますが、BAD ENDも淡々としたものはあまり存在しないので、それなりに楽しめます。
グラフィック等ですが、PS3で出しただけあって、綺麗です。Wii版をプレイしていないので、比較はできませんが。
本物の渋谷を舞台としているので、行ったことがない人は「こんなところかぁ」と楽しめるかもしれませんし、行ったことがある人は「あぁ、ここか!」と楽しめるかもしれません。
たまにムービーも挿入されますが、基本は静止画。俳優さんたちの演技力は迫真で、読者をより物語へと引きつけます。なんでも、静止画とは言え、実際の撮影の時には台詞まで言っていたみたいです。
クリア後についてですが、サブシナリオやカルトクイズなどそれなりにボリュームがあります。
詳しくは書きませんが、骨の髄までしゃぶりつくせるゲームとなっています。
個人的には満点を付けたい作品。
評価:★★★★★
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