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生物学の門を叩く


ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
内容(「BOOK」データベースより)
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。




そんな著作。
生物学関連の書籍では有名な本らしく、動物はサイズ(体重)によって時間や寿命といった部分が違う、という点が主な論題となっていると思い手に取ったが、中身はコテコテの生物学。タイトルに惹かれた人は容赦するべし。


●第1章『動物のサイズと時間』
本書のサブタイトル「サイズの生物学」の導入といったところ。体重やサイズによってこういったことが違っているのだ、という具体例を挙げ、以後の章に繋いでいる。

●第2章『サイズと進化』
ここでは、コープの法則や定向進化説といった進化の諸説についての説明と、その考察について、サイズの面で説いている。
本章を見ればわかるが、一般的に大きいことは環境の影響を受けにくく、体重等の関係で争いにも強い。しかし、大きいことがよいならば、どんどん大きな生物に進化していくだろう。そういったように、サイズの大きいこと、小さいことの利点と欠点を見ながら進化について論じている。
また、本章で取り上げられている『島の規則』は聞いたことがなかった上、人間の実生活にも当てはまるのではないかという考えは純粋に勉強になった。

●第3章『サイズとエネルギー消費量』
章題の通り、生物におけるサイズとエネルギーの消費量についてどういった規則性があるのか、という点を計算式などを用い、実験結果を提示している。ここから、心臓の脈打つ回数とそのエネルギー消費、表面積や体積といった要素がどのように関わりあっているのかがわかる。他にも、単細胞生物、恒温動物、変温動物の観点で体温の差と消費エネルギーについても考察している。計算式やグラフもあり、素人目にはなかなか本格的に見え、研究結果のまとめはともかく、研究過程の説明は難しく感じた。
なかなか興味深い結果が書かれているが、規則性のある結果こそ出ているが、その理由を説明できないため、教科書に載っていない内容だそうだ。

●第4章『食事量・生息密度・行動圏』
まずは生物の体重と比べた食事量。これは生物によって食糧の栄養価が違うため、摂取するエネルギー量で調べている。また、魚類、哺乳類なども区別した研究結果や食べた分のエネルギー消費の用途(成長・維持・排泄)の割合などが書かれている。やはりそれなりの規則性が見いだせられる。
また、草食獣、肉食獣の生息密度と行動圏についてもデータを提示。これまた、規則性があるので興味深い。

●第5章『走る・飛ぶ・泳ぐ』
動物の動物たる証拠、動くことについて研究した章。哺乳類、魚類、水中の哺乳類、鳥類、など様々な運動エネルギーを計測し、その結果を示している。なぜライオンは普段だるそうにしているのか、イルカはなぜ無邪気に泳ぎまわっているのか、といったところがわかってきてなかなか面白い。

●第6章『なぜ車輪動物がいないのか』
なんともそそる章題だが、結論は言われてみればいたって単純明快。この程度の回答が考え付かない自分の凡才ぷりに少し悲しくなったのであった。
また、水中でスクリューを使う動物や空中でプロペラを使う動物がいないのはなぜか、という点も考える。この発想自体が既に面白い。
ともあれ、人間の車輪を含めた産業についてまで見解を示せるところは、なかなか興味深い。


●第7章『小さな泳ぎ手』
ここでは鞭毛や繊毛を使って泳ぐ、精子やバクテリアといったとても小さな生物を取り上げている。鞭毛と繊毛の動きや形の違いや使い分ける理由、大きいサイズの生物が筋肉を使うようになった理由などを述べている。レイノルズ数を絡めた専門的な説明が続くが、そういった公式を理解しようとせずとも読める内容であり、慣性力と粘性力という働く力の話は知らなかったので生物の進化において少しそそる内容であった。また、拡散を利用するバクテリアの生態系も面白い。

●第8章『呼吸系や循環系はなぜ必要か』
生物に呼吸系や循環系の必要となる要素を研究。結論としてはやはりサイズが肝となる。あるいはサイズに焦点を当てて語っているだけかもしれないが、私にはわからない。

●第9章『器官のサイズ』
肺や心臓、脳などの器官と生物の体重や体積、表面積とはどのような関係があるか、という点を述べている。また、動物における建築材料と例えられる骨格についても触れている。ここでも、なかなか面白い規則性が見られる。

●第10章『時間と空間』
サイズと時間の関連性、一般論と動物学での時間の捉え方の違いなどが書かれている。分量は少なく、少し哲学的な話になっている。

●第11章『細胞のサイズと生物の建築法』
生物を構築する細胞の特徴をサイズを主としてまとめている。植物細胞と動物細胞の違いは、建築法で例える理由がわかりやすく、植物が動かない代わりにどういった構造をしているのかといった点でとても勉強になった。

●第12章『昆虫――小サイズの達人』
これまでの内容を統括した上で、昆虫という動物について研究している。クチクラの構造、肺や心臓といった循環系が無いのはなぜか、サイズの大きい昆虫がいないのはなぜか、エネルギー効率の悪い木の葉を食べることなどが書かれている。植物に含まれるセルロースを分解する酵素であるセルラーゼが進化しなかったのはなぜか、という点はなかなかロマンある研究課題かもしれない。

●第13章『動かない動物たち』
動物のくせに動かないものとして、主にサンゴを挙げ、その生態系について述べている。キーポイントは群体という観念。生物学に疎い私にもそれなりにわかる内容だった。

●第14章『棘皮動物――ちょっとだけ動く動物』
ウニやヒトデといった隠れもせず動きののろい動物を挙げ、その生態系を探る。この無防備な動きで捕食者からどうやって逃れてきたか、などよくよく考えれば一味違う動物だ。どうしてそのように進化したのかという謎について著者なりの見解も示している。ヒトデの体表や断面図などの写真は普段お目にかかれないのでなかなか面白い。


名著として耳にしたことがあり、生物学入門という謳い文句もあったので、気になって購入してみたが、さすが理系学問というだけあってか難しい部分がある。『心拍数一定の法則』や『島の規則』など結論だけを聞けば面白くはあったが、聞きなれない単語や研究(計算)過程を詳しく書いている為、どうしても流し読み気味になってしまうところがあった。
そもそもタイトルにそそられて興味本位で買った私にとっては、タイトルのような時間の違いに関する内容は少ししかなく、生物学の世界に踏み込んでしまい少し読んでいて苦しい部分があった。事実、上記の章ごとの感想もいまいち要領を得ていないかなと思う。全体的にCSのアニマルプラネットのようなドキュメンタリー色の強い、ジャンルも多岐にわたる生物学のまとめである。
数式、公式にアレルギーのある人は読んでいてつらいかもしれないが、大まかな内容を知る分には問題はないと思われる。

著者の書き方から察するに、ところどころ個人的な見解がある。学識として確立するには根拠の乏しいもの、証明しきれないものが多いのだろう。物理学で取り上げられる宇宙もそうだが、歴史の長い進化の過程を研究することの難しさを感じさせる。

おそらく、生物学に詳しかったり、根っからの生物学に興味のある方には期待に応えてくれる内容だが、私には少し内容が専門的に感じ、重たかった。とは言え、様々な動物の生態系を知ることで、普段気にしていない部分が改めて考えると謎に思えてきて、それなりに面白い内容ではある。


評価:★★★☆☆

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)」
 [新書]
 著者:本川 達雄
 出版:中央公論社
 発売日:1992-08
 価格:¥ 714

 
 
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もうやだ、この世界経済


騙されないための世界経済入門
内容(「BOOK」データベースより)
ハンパな知識だから騙される!今さら人に聞けない「経済のしくみ」から2011年以降の経済動向まで、この1冊で分かる。







と嘆く投資家に捧げたい。

FX・株・投資信託と難しい時期に始めてしまい、利回りが困窮を極めているどころか、損失まで生み出している私だが、運用方法については他書でそれなりに勉強している一方で、そもそも今が政治経済的にどういう状況なのか理解していない部分もある。
そんなわだかまりを解消するべく手にしたのがこの本。

著者は私が信頼をおいている、マネー関連雑誌で的中率トップを誇っているエコノミスト。何より、売上げを追求して読者の危機感を無駄に煽ったり、期待する言葉を無責任に発するようなことはなく、予想を発言することの責任感を強く感じる点がとても好感が持てる。

本書ではそんな著者が2011年以降の世界経済を予測したものを掲載している。内容は下記章題の通り。

●第1章『米国経済のゆくえ<Part1>』
リーマンショック以降のアメリカの経済を見極め、主に財政再建の策や昨今のドル安について考えている。環境経済を掲げていたオバマ政権、金融依存のアメリカ経済、またその先行きやデフレが起こる可能性などについて明確な意見を述べている。

●第2章『米国経済のゆくえ<Part2>』
FRBの金融政策や、リーマンショック以降の株高の謎、雇用問題などを始め、アメリカがどういう国になっていくかという大きな方向性にまで予測を立てている。バブル崩壊後の現在の日本のような状況にアメリカが陥るかどうかという点も読みどころ。

●第3章『欧州経済のゆくえ』
ギリシャ危機の真相、EUという連合体の性格、EUの政策などの欠点などの特徴を捉え、今後を予測する。現在のユーロ安は今後どうなるか、世界経済に対する影響はどうなのか、デフレになるか、EU加盟国各々の姿勢といったことをはじめ、今後を予測する材料とその分析の結果を述べている。

●第4章『中国経済のゆくえ』
現在、景気が好調な中国。バブル崩壊はあり得るか?人民元の今後は?輸出入の経済的駆け引きは?民主化の可能性は?など様々な点を教授してくれる。
共産主義の長所による経済戦略や中国のしたたかな外交に着眼する一方で、中国の抱えているリスクや今後の予測される事態を述べる。


●第5章『世界経済のゆくえ』
章題の通り、統括して世界経済のゆくえを予測するわけだが、その世界経済の本質を2つ挙げている。予測材料は、ただ各国の状況を推測するだけではなく、世界各国が絡み合う要素を取り上げたその本質に集約されていると言える。


●おわりに『日本経済が生き残る道はあるか?』
バブル崩壊以来、一向に希望の見えない経済が続いている日本のこれから先に生き残る道があるかどうか、という点で論じている。国際競争力や国策、税金などの観点だけでなく、様々な方向性から著者が考える策を述べている。著者は日本の未来を考える際には、3つの論点に集約されると言っている。気になる方は読んでみて欲しい。


政策や経済についていまいち情報収集できていない私にとって、この本はとてもありがたい。米国、欧州、中国などの国家がどういった政策を掲げていて、どういった問題に直面しているのか、また今後どうするべきであってどうにかできるのか、といった部分に統計や歴史や理論などに裏付けされたしっかりとした予測を立てている。
そういった根本的な部分から、世界経済の動き(の予測)を教えてくれる上、小難しく書かれていないという点も読みやすくてよい。
これがその通りになるかどうかはもちろん別ではあるが、本書を購入した目的でもある、投資などの資産運用にも生かせるはずだ。

世界経済の勉強として、投資家としてだけでなく一社会人として知っておくべき部分も多かった上、それがわかりやすく網羅されている印象を受けた。出版された2010年11月末時点での状況のはずだが、現在でも全く違和感なく予測と違うこともなく書かれているので、買って損はないと思われる。
不満点もなく満足。手に取った対価はある書籍だ。満点で。


評価:★★★★★

騙されないための世界経済入門
「騙されないための世界経済入門」
 [単行本]
 著者:中原圭介
 出版:フォレスト出版
 発売日:2010-11-22
 価格:¥ 1,575

 
 
不安神経症、対人恐怖症などのお供に


森田療法 (講談社現代新書)
内容(「BOOK」データベースより)
他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。



他書で目にした森田療法という治療法。心理学の中でも臨床的な部分に興味を持つ自分としては触れておこうと思った。
何よりも、この療法は、神経質や神経症に効果を発揮するという。生来からかはわからないが、気付いたときには神経質な性格になっていた自分としては是非とも学んでおこうと思う。


●はじめに『「森田療法」とは何か』
森田療法の概容がまとめられている。欧米などで主流だった不安や葛藤についての考え方との違い、「あるがまま」の理念、などを触れている。具体的な部分は第1章以降になる。

●第1章『森田療法の基礎理論』
まずは「人間は何のために生きているのか(生きるための欲望)」という哲学的な部分を生物学的な見地や哲学者たちやフロイトの意見などを交えながら、森田療法の創始者である森田正馬氏の考えを述べている。
その『生の欲望』についてを乳幼児期からの発達とともに変化するという研究内容が主。また、創始者の森田氏の意見の解説のみならず、筆者なりの疑問点や意見についても窺える。
アドラー心理学とも通じており、劣等感を向上心に変えるか神経症に変えるかといった岐路や、家庭内暴力・校内暴力・いじめといった部分の原因などにも言及しており、そういった神経症的な行動の例を挙げている
その一方で、筆者の体験談を挙げて『生の欲望』についての解説を述べている。読者としても筆者のような経験をしている人がいるだろう。それらの体験が『生の欲望』という観点で、どのように捉えるべきかの模範となる。

●第2章『神経質(症)のメカニズム』
章題の通り、神経質や神経症のメカニズムについて言及する。
まずは、性格の特徴として先天性や後天性の性格変化について一卵性双生児の例などを挙げて説明する。どういった人物、性格が神経症を患ってしまうのか、またヒステリー性格についても触れ、神経症としては同じ括りでも神経質者と違うことについて述べている。
また、森田療法を知る上で不可欠な『ヒポコンドリー性基調』とその考え方や、神経症の発症をフロイト説と森田説とで比べながら紹介。
他にも、神経症の根幹とも言える『精神交互作用』、『とらわれの心理』として強迫観念と妄想の違い、誰もがやりうる『はからいの行動』の健常者と神経症の人との違いなどを論述し、神経症のメカニズムを考察している。

●第3章『神経質(症)の諸症状』
ここでは、神経質(症)にはどういった症状が起こるのか、という点を強迫神経症や不安神経症に分け、その中でさらに細分化しながら実例とともに紹介している。
大方、健康な人(本書では日常人と表現)でも持ち合わせているものが悪い方向に作用しているために、病にまで発展しているものと思われる。それを自分だけにあることと思って、異常な状態を排除しようとする方向にもっていこうとすればするほど悪化してしまう負の連鎖が起こってしまう。それを裏付ける症例が挙げられている。

●第4章『神経質(症)の治し方』
これまでの章での内容を踏まえ、ではどうすれば治っていくのかという点について論じている。
性格面・精神面が絡む病のため、解決策はやはり患者次第ではあるのだが、治すための考え方や方法についてはここで具体的に語られる。
また、具体的な症例とその治癒(克服)を書いており、さらには神経症に悩み続けてきた患者の日記も引用されている。その甲斐あり、前章までで語られてきた『あるがまま』の意義を実例とともに理解できる上、同様の症状に悩んでいるとしたら共感できる部分も多々あるだろう。治療者でも被治療者でも読めるような内容である。
一方、『あるがまま』を誤解したものとして、「外に出たくない」「人付き合いは嫌」といった逃避行動を『あるがまま』と感じている人物を挙げ、諫める部分もある。

●第5章『日常に生かす森田療法』
第4章に加え、神経症の人の話と治療について述べ、日常的にどう生きていくことが肝要かを教えてくれる。神経症を患っていた筆者の体験談も赤裸々に書かれており、「あるがまま」の理論を実践的に勉強できる。

●おわりに『生と死を見つめて』
著者の体験談を中心とした内容。妙に感傷的な印象を受けてしまい、言いたいことがぼやけているかなぁ、とも思った。さすがに筆者自身のことだけに筆に力が入ったのだろうか、と思ってしまったのだが、筆者の経歴を見ていなかったので、まさか筆者が癌によって逝去しているとは知らなかった。癌との闘病の間にも筆者の『あるがまま』の姿をこの章で記している。
『ゆるし』などの理論は説得力があり、神経質(症)の方なら共感できる部分は多いかもしれない。


全体として、森田療法の創始者である森田正馬氏の説を説明していくだけではなく、筆者自身の体験談や今まで接してきた患者から察した内容なども含んでおり、森田療法の筆者なりの考えも書かれている。
上記の章ごとの感想にもある、森田療法の肝でもある『とらわれの心理』『はからいの行動』『あるがまま』といったキーワードは、言葉だけ聞いて「なんとなくわかるから読まなくてもいいや」と思うべきではない深い内容である。

神経症を患っている自分にとってはこの本は救いになるような点はあることにはあるが、過度の自己観察が裏目に出るような症状なため、理論を知っただけでどの程度精神の自己鍛錬に繋がるかは不明だ。
本書にある『目的本位』の目的がどれほど自分の真の目的なのか見誤らない自信はあまりない。そもそもその目的(生の欲望など)は道徳的な感触があり、十人十色な我々が人としてどうするのが正解か、という点を押しつけている部分もある気がする。
そういった線引きに敏感になってしまうのは、逃避行動と生の欲望の葛藤が起こっている証拠なのかもしれない。と、いろいろ考えさせられる本でもあった。

また、筆者は行動療法と森田療法は似て非なるものと言っているが、少なくとも行動療法のような慣らすようなことから始めなくてはならない。ただ、行動療法とは違う点があるので、その点は本書に書かれているので是非読んで理解しておきたい。

本書を読んでの効果はさすがに即座に出るものではないので、その点の感想は難しい。
その一方で、神経症である自分がどうするべきなのか、どう克服していくのか、という指針を示してくれる内容ではある。
こういったメンタルヘルスの実践術があるという参考にはなるので、興味のある方は手にとってほしい。


評価:★★★★☆

森田療法 (講談社現代新書)
「森田療法 (講談社現代新書)」
 [新書]
 著者:岩井 寛
 出版:講談社
 発売日:1986-08-19
 価格:¥ 735

 
 
なんなんだ、この非の打ち所のなさ


勝ち切る投資 お金の神様2
内容紹介
「最も予測の当たるエコノミスト」が選んだ「どれを買っても有望な銘柄」をお教えします!
「なんの銘柄を買えばいいか、わからない」「どうして自分の株は上がらないんだろう」
普段、そんな「疑問」を抱いている方は多いのではないでしょうか。





内容紹介が非常に長かったので、コピペするのも憚られるため以下省略します。

資産運用のコンサルティングや執筆活動など財テク面、経済予測面での知識が豊富な著者中原圭介氏の意見は、なかなか信頼している私。リーマンショックを当てたという点はもちろん、エコノミストとして読者に正確な情報を提供し、読者に投資や資産運用の方法論や経済市場の考え方などをしっかり教えておきたいという思いが強く伝わってくるからだ。
何よりも、自分の予測と反した結果が出たときにも、きちんと謝罪(するほどでもないにしても)したり、なぜ結果が違ったかなどのアフターフォローもしている真摯な姿勢は、メディアの言っていることは信用できなくなる投資家達にとってはやはりそれなりの信頼を獲得できていると思う。

本書はまえがきにもあるとおり、週刊誌で連載されている『お金の神様』に書いた記事をまとめたものであるが、「こんなの情報が遅い」と思うこともなく、むしろ主旨としては読者に著者のエコノミストとしての考え方を教授するような内容と捉えてよい。
それに、一年ほど前の記事であっても、それが著者の意見と現在の状況と比べることができ、著者の経済予測の実力を測ることができる。また、その点については、章の初めに検証コラムが書かれており、その章から特定の議題をピックアップして、当時の記事と現在までの情勢を検討し、今後の展望も書き添えているので、読みがいがある。

章題は以下の通り。Q&A方式の記事となっており、各章に10個以上のQ&Aが載っている。あまり章題の体を成していないような内容もあるため、特に勉強になったと思う議題について各章ごとに挙げていこうと思う。


●第1章『「逆張り」は危ない!』
個人的に特に勉強になったことは、
金融危機に直面しているアメリカの実情を推測している『Q3.アメリカもデフレになる?』
ETFについて詳しくなかったので、実際のところどうなのかがわかった『Q4.商品ETFは投資対象になる?』
具体的な発表された数字だけでなく、その内訳までも考慮しながら考察している『Q5.中国・不動産バブルは崩壊する?』と『Q8.日本のGDPは劣化した?』
また、日本の個人投資家にとっては『Q9.順張りと逆張り、どちらが有効?』の項は頭に入れておきたい。

●第2章『終身保険は消えゆく商品!』
個人的に特に勉強になったことは、
株式の運用や企業間での株のやり取りの実情を知ることができた『Q15.「持ち合い解消の売り」って何?』
少子化の深刻な日本の将来を考えさせられる『Q16.日本は移民を受け入れるべき?』
日本のよい部分を確認させられる『Q19.日本は観光立国できる?』
生命保険などの運用の実態と今後の展望が理解できる『Q21.「終身保険が消える」ってホント?』
原発事故関連で現在代替エネルギーに関心が高まっている現在だが、それが起こる前の著者の記事で太陽電池についてどう考えているのかを知ることができる『Q26.太陽電池株はいまだ有望?』

●第3章『金はまだまだ買われる!』
個人的に特に勉強になったことは、
ギリシャショックからのユーロ圏の現状と今後を予測している『Q29.アイルランド支援で欧州危機は収束?』
REITについて無知であった自分に不動産関連の状況が少しわかった『Q30.日銀の買い取り決定でREITは「買い」?』
まだ2011年は終わってこそいないが、著者の先見の明が拝める『Q35.'11年の日経平均の高値は?』
アメリカの金融緩和策にメスを入れる『Q39.株高こそ最高の景気対策?』
さすがに具体策までは答えていないが、エコノミストとしての考察が光っている『Q41.どうすれば就職難を解決できる?』

●第4章『「日本売り」がメインディッシュだ!』
個人的に特に勉強になったことは、
楽観的な株価予想が蔓延していた2011年初頭で、例外であった著者の弱気な株価予想。現時点、結果的には著者に軍配が上がっていると言っていいだろう。記事を書いた当時の根拠がわかる『Q43.なぜ一人だけ株価予想が弱気なの?』
私は中国情勢に無関心故に考えてもみなかった中国の民主化について著者が推測する『Q48.中国はいつ民主化する?』
トレンドの転換点を少なからず理解できた『Q55.「相場の転換点」を見分けられる?』

●第5章『アメリカのミニバブルは最終局面!』
個人的に特に勉強になったことは、
東日本大震災以前に日立製作所や東芝の株を薦めていた著者が、反省をかねて今後のそれらの株の扱いについて述べている『Q57.原発事故の日立株への影響は?』
震災後、一時的に外国人投資家の日本株買いが目立った原因がわかる『Q65.外国人はなぜ震災後の日本を買った?』
原発事故の原因として賠償を迫られている東京電力の株をどうすればよいか答えている『Q66.東京電力株は処分すべき?』
新しい発想と雇用方針に着目し、とあるアパレル関係の会社を紹介した『Q70.いちばん気になる会社は?』

●第6章『買うなら「国策銘柄」だ!』
個人的に特に勉強になったことは、
「株は10月に買って4月に売れ」の格言の意味がわかった『Q71.「ヘッジファンドの決算売り」って何?』
東日本大震災後の復旧について純粋に「なるほど」と思わされた『Q72.「自粛は悪」ですか?』
昨今の円高の中、不用意な外貨買いで痛い目を見た自分に、今後の展望を教えてくれた『Q77.日本円を買っているのは誰?』
投資家のメンタル面に対する言及も映える『Q79.急騰した保有株はいつ売るべき?』

●特別付録『日本が「ギリシャ化」しても買える銘柄』
現在、ヘッジファンドの標的にあっている欧州。今後、欧米の経済が健全になってきたら日本が標的になるのはほぼ確実と読む著者。その中で、「どのような市場経済の変化が起き、どの銘柄を見ていくべきか」という点を教えてくれる。
スクリーニングの方法と、見るべき情報など会社四季報と照らし合わせて述べてくれている。それどころか、むしろこんなに具体的に銘柄や業績診断を晒して大丈夫なのだろうか?という心配がよぎるほどだ。
情報収集力に乏しい個人投資家の身としては、この付録を丸呑みして今後の投資に活かそうと思うのだが、そこを狙い撃ちされないかという恐ろしさもある。おそらく、流動性の観点から大丈夫だとは思うのだが。
とは言え、個人投資家でも会社四季報などの情報でどう判断していくべきかというアドバイスが丁寧に書かれているため、数年後業績の変わった企業をスクリーニングする際に、自分でもできるようには書かれている


本書に書かれていることをどう捉えるかは読者次第ではあるが、経済や資産運用の面での勉強にはもってこいといった内容なのは違いないだろう。Q&A方式なのがまた論旨を掴みやすく、読解しやすい。
また、今後の市場予測についてもきちんとした統計や経験則、各国の性格などを考慮した上で綿密に行っており、ズバッと「おそらくこうなる」「少なくともこうなるのは間違いないと思います」と自信を持って答えている。
その信憑性は、今のところ折紙付。もちろん、失敗することもありますが、その原因についてもきちんと研究した上で、アフターフォローとして読者にブログや雑誌・書籍などで説明してくれる真摯な態度には敬服せざるをえない。

「この本の通りにやればいい」というような内容ではなく、世界経済のとらえ方、プロとしての考え方を教授した上で、読者にもどう考えることが投資のセンスに繋がるかという読者の素養を上げることも意識しているため、実に丁寧。
内容の理解しやすさ、今後の投資活動の方針の構築、著者の信頼感、これらの要素を絡めれば、満点に値する出来だと思われる。

ちなみに、あくまで投資の話であって、著者は投機は決して薦めていない。

評価:★★★★★

勝ち切る投資 お金の神様2
「勝ち切る投資 お金の神様2」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:中原 圭介
 出版:講談社
 発売日:2011-09-17
 価格:¥ 1,575

 
 
私たちはどうしたいのか


ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)
内容(「BOOK」データベースより)
「…ただ、生命の尽きる場所」。ある冬の日に阿東優が入院した「7F」は、そういう場所だった。そのことを彼に告げたのは、長い黒髪を持つ同じ入院患者の美少女。名前はセツミ、血液型O…手首の白い腕輪に書かれていたのは、ただそれだけ。他にわかることといえば、いつも不嫌機そうな顔をしているということと、優より年上なのに、まるで子供のような外見だということぐらい。最期の時を迎えるのは、自宅か7Fか。いずれの選択肢をも拒み、ふたりは優の父親の車を奪って走り出す。行き先も、未来さえも持たないままに―。人気ゲームクリエイター片岡ともが綴る感動のストーリー、待望の小説化。



原作はフリーソフトのノベルゲーム。話題作、大人気な作品ということは知っていたが、なかなか触れることができなかった。PSPのソフトや本書のようなライトノベル形式にメディアミックスされていることからも、その人気は顕著だろう。
プレイ後の方々の評判を聞くからに、「ただのギャルゲー」で済ますレベルの作品ではないと思い、本書を読むに至る。
長い黒髪と言っておきながら、イメージイラストが黒いと言うほどではないのだが、気にしないでおこう。
ちなみに、原作は未プレイなので、比較してのレビューはできない。

あらすじからわかるように、入院、不治の病系の題材。オーソドックスではあるが、直球で涙腺を刺激してくる作品は、ミステリーばかり読んでいる自分にとって久々に読んでみたい気分であった。
その内容はやはり直球勝負。奇をてらったものではなく、この題材にありがちな王道ストーリー。類書を挙げろ、と言われても頭に浮かぶほど多読家ではないので、比較材料は無いのだが、まぁスタンダードなお話。
だが、それでいて泣けるのがこの手の話のいいところ。「病や死で涙を誘うのは安易だ」と反感を抱くようなチープさも感じず、ライトノベルらしさ漂う読みやすさで、スッと読めてグッと来る。

死を待つ身である彼らの心情はそれほど描かれているわけではないが、行間から深く読み取れる。
静かにただ主人公たちの行く末を見守りながら読み進める。それは切ないストーリーを感じさせる中で、心地よい川の流れに身を任せるような暖かさを感じた。
また、彼らの生き様には、こんな自棄っぱちなこともいいじゃない、と思わせてくれるような、社会的束縛から解放されるカタルシスに溢れている。

そして、ラストは……。こんなもんでしょう。壮大な伏線を張っているわけでもないので。ただ、病気に関する言及とその病を患っている登場人物の心理描写の薄さがちょっと気になった。何より、ヒロイン側に焦点が当たりすぎていて、主人公側の描写が疎かに感じた。特に、家族絡みの問題はもっと掘り下げて欲しいところだ。
これ系の題材の作品の割には……という感想。

全体の出来として、作者は小説家ではなくゲームのシナリオライターなので、その辺りの専門性の差を感じる人は感じるのかも知れない。そんな小難しく考えて読むものでもないし、読んでいて不快な点も無かったので、自分としては無問題だ。


評価:★★★☆☆

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)
「ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)」
 [文庫]
 著者:片岡とも
 出版:メディアファクトリー
 発売日:2008-07-23
 価格:¥ 609

 
 
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