もうやだ、この世界経済
内容(「BOOK」データベースより)
ハンパな知識だから騙される!今さら人に聞けない「経済のしくみ」から2011年以降の経済動向まで、この1冊で分かる。
と嘆く投資家に捧げたい。
FX・株・投資信託と難しい時期に始めてしまい、利回りが困窮を極めているどころか、損失まで生み出している私だが、運用方法については他書でそれなりに勉強している一方で、そもそも今が政治経済的にどういう状況なのか理解していない部分もある。
そんなわだかまりを解消するべく手にしたのがこの本。
著者は私が信頼をおいている、マネー関連雑誌で的中率トップを誇っているエコノミスト。何より、売上げを追求して読者の危機感を無駄に煽ったり、期待する言葉を無責任に発するようなことはなく、予想を発言することの責任感を強く感じる点がとても好感が持てる。
本書ではそんな著者が2011年以降の世界経済を予測したものを掲載している。内容は下記章題の通り。
●第1章『米国経済のゆくえ<Part1>』
リーマンショック以降のアメリカの経済を見極め、主に財政再建の策や昨今のドル安について考えている。環境経済を掲げていたオバマ政権、金融依存のアメリカ経済、またその先行きやデフレが起こる可能性などについて明確な意見を述べている。
●第2章『米国経済のゆくえ<Part2>』
FRBの金融政策や、リーマンショック以降の株高の謎、雇用問題などを始め、アメリカがどういう国になっていくかという大きな方向性にまで予測を立てている。バブル崩壊後の現在の日本のような状況にアメリカが陥るかどうかという点も読みどころ。
●第3章『欧州経済のゆくえ』
ギリシャ危機の真相、EUという連合体の性格、EUの政策などの欠点などの特徴を捉え、今後を予測する。現在のユーロ安は今後どうなるか、世界経済に対する影響はどうなのか、デフレになるか、EU加盟国各々の姿勢といったことをはじめ、今後を予測する材料とその分析の結果を述べている。
●第4章『中国経済のゆくえ』
現在、景気が好調な中国。バブル崩壊はあり得るか?人民元の今後は?輸出入の経済的駆け引きは?民主化の可能性は?など様々な点を教授してくれる。
共産主義の長所による経済戦略や中国のしたたかな外交に着眼する一方で、中国の抱えているリスクや今後の予測される事態を述べる。
●第5章『世界経済のゆくえ』
章題の通り、統括して世界経済のゆくえを予測するわけだが、その世界経済の本質を2つ挙げている。予測材料は、ただ各国の状況を推測するだけではなく、世界各国が絡み合う要素を取り上げたその本質に集約されていると言える。
●おわりに『日本経済が生き残る道はあるか?』
バブル崩壊以来、一向に希望の見えない経済が続いている日本のこれから先に生き残る道があるかどうか、という点で論じている。国際競争力や国策、税金などの観点だけでなく、様々な方向性から著者が考える策を述べている。著者は日本の未来を考える際には、3つの論点に集約されると言っている。気になる方は読んでみて欲しい。
政策や経済についていまいち情報収集できていない私にとって、この本はとてもありがたい。
米国、欧州、中国などの国家がどういった政策を掲げていて、どういった問題に直面しているのか、また今後どうするべきであってどうにかできるのか、といった部分に統計や歴史や理論などに裏付けされたしっかりとした予測を立てている。
そういった根本的な部分から、世界経済の動き(の予測)を教えてくれる上、
小難しく書かれていないという点も読みやすくてよい。
これがその通りになるかどうかはもちろん別ではあるが、本書を購入した目的でもある、
投資などの資産運用にも生かせるはずだ。
世界経済の勉強として、投資家としてだけでなく一社会人として知っておくべき部分も多かった上、それがわかりやすく網羅されている印象を受けた。
出版された2010年11月末時点での状況のはずだが、現在でも全く違和感なく予測と違うこともなく書かれているので、買って損はないと思われる。
不満点もなく満足。手に取った対価はある書籍だ。満点で。
評価:★★★★★