いやぁ、こんなカウンセラー……
内容(「BOOK」データベースより)
カリスマ音楽教師を突然の惨劇が襲う。一家4人が惨殺されたのだ!犯人は13歳の少年だった…。法で裁かれぬ少年への憎悪を抑えられない彼女の胸に、一匹の怪物が宿る。一線を超えた時、怪物は心を食い尽くす!臨床心理士・嵯峨敏也は犯罪の奈落に堕ちた彼女を、そして凶行の連鎖を止められるのか!!大ヒットシリーズ「催眠」の第2弾。徹底したリアリズムで書かれるサイコサスペンスの大傑作が、待望の完全版で登場。
『催眠』や
『万能鑑定士Q』シリーズなどを読んで、すっかりハマってしまった松岡圭佑ワールド。今回は
『催眠』の続編。
カリスマ音楽教師の元に惨劇が襲い、その犯人は13歳の少年。彼女の心に怪物が宿る。という湊かなえ氏の
『告白』に似た設定の復讐劇。そこに前作からの主人公である臨床心理士・嵯峨敏也が彼女の凶行を止めるといった内容。
そのような話の割に、始まりは突飛な内容だったので面食らったが、読み進めていくにつれて、序盤の意味が分かり、ぞっとする構成。
刑法や少年犯罪のあり方についての警察としての批判や苛立ちも交えた描写は巧みである。読者としても、薄気味悪い加害者の態度、それを追求することを拒む弁護士やこの事件に該当する法律は、とても歯がゆく、感情が入り込むシナリオだ。
また、
被害者のカリスマ音楽教師の描き方も秀逸で、加害者に対する憎しみの念はもちろん、精神状態の不安定さ、精神病や異常な体質の症状の描き方は読んでいて映像が浮かび上がるように伝わる。
ただ、
カウンセラー(臨床心理士)の仕事内容が誤解を生みかねない可能性があるところはいかがなものかとは思う。
かく言う私は関連書籍を読んでいるだけなのでそれほど精通しているわけではないが、おそらく本書の嵯峨敏也ほどクライアントに積極的に話をしたり、憶測で評論することはないはず。「指摘が当たっているからいいものの、間違っていたらどうするの?」という気持ちになる。まぁ、その点はフィクションだからいいのだが。。。
リアリティを追求した専門性あふれる作品がウリな感じだが、この人間性は
少し臨床心理士が探偵役としてハマっていない印象を受けた。
終盤の種明かしも、感動的展開と言うよりは「専門的分析でこう見受けられます」といった少し淡泊な仕上がり。
調味料であるはずの専門性が前に出すぎていて、本筋のストーリーが辛い感じになったかな、というのが個人的な感想だ。
面白くはあったが、同著者の他の作品に比べると微妙だった。
評価:★★☆☆☆
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