好みの問題かなあ……?
内容(「BOOK」データベースより)
神の仕掛けか、悪魔の所業か。地獄のバトルが今、始まる。
ダークゾーンって、これまたそそらないタイトルだなあ。と思いはしたが、貴志祐介好きの私はすぐにレジへ持っていく。
話のあらましは、世界と断絶された孤島で、わけもわからぬまま赤軍の王将として存在している主人公が、青軍との戦に出ることになるというもの。『わけもわからぬ』というのはその通りで、始まりからいきなりその世界に飛び込んで赤軍の王将として立っており、説明を受けて青軍と戦って勝て、と言われるのである。
まぁ、何とも急な話だが、下手な小理屈を重ねてファンタジーに持っていくより、伏線としても話の展開の早さとしてもこういう方が面白いかもしれない。
さて、その戦いのルールだが、赤軍と青軍がそれぞれ元は人間だったと思われる者が、一つ眼(キュクロプス)、死の手(リーサル・タッチ)、始祖鳥(アーキー)、歩兵(ポーン)といった特殊な能力を持っている異形の駒となって相手軍の王将を四度殺せば勝ちというもの。王将以外の駒が死んだとき、相手の駒となって動くことができる。要は、チェスや将棋のようなもの。
なぜ戦っているのか、勝ったらどうなるのかといったことはさっぱり分からず、負ければ消滅するという事実だけが知らされる。
熱い戦略バトルファンタジーといった感じだろう。設定こそ単純だが、これをどれほど面白く書いてくれるかが著者の手腕の見せ所。
読後感としては、バトルパートの戦略的な面白みよりも、
私としては断章を通して述べられる現実世界での主人公の成り行きの方が気になってしまった。雑誌での連載ものということもあってか、
全体の流れや伏線面ではどうも単調気味で味気なさがあったのは残念。「なんと!そんな意外な戦略が!」というわけでもなかった。
オチについては、こんなもんですかね。期待してはいなかったが、
正直上手く締めたなぁとは思えなかった。
まぁ一応、ミステリーとして含ませてもよさそうだ。
自称貴志祐介ファンとしては貴志祐介氏の良さが感じられない作品だったかなあ、と。著者の大好きな昆虫学的な知識と生々しい表現は空回り気味な印象で、地獄のような世界観を描きたかったのだろうが、戦略的ゲーム性の面ではあまり必要性が感じられなかったというのもある。
個人的にはゲーム的感覚が恐ろしい世界観を打ち消したかな、と。
将棋の対局に似た相手との読み合いやつばぜりあいを表現した点は申し分ないかもしれない。
期待していただけに、ちょっと評価は辛く。
評価:★★☆☆☆
「ダークゾーン」
[単行本]
著者:貴志祐介
出版:祥伝社
発売日:2011-02-11
価格:¥ 1,890
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