人間の脳や心の動きを学ぶミステリー
内容(「BOOK」データベースより)
インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、日本中のメディアが殺到した。その頃、二億円もの横領事件の捜査線上には、ある女性が浮かび上がっていた。臨床心理士・嵯峨敏也が、催眠療法を駆使して見抜いた真実とは?衝撃のどんでん返しの後に感動が押し寄せる、松岡ワールドの原点が、最新の科学理論を盛り込んで完全版となって登場。
『万能鑑定士Qの事件簿』シリーズで知った著者の原点、『催眠』シリーズ。著者、松岡圭祐氏の描く内容はタイトルとあらすじだけでもすでに興味深かったので、購入に至る。
さてさて、ストーリー。インチキ催眠術師の前に現れたチャネラー(宇宙人と交信出来る能力を持つ人)が正確な予知能力を披露するところから始まる。その間、インチキ催眠術師は一万円札がいつの間にか財布から無くなるといった事象が時折起こる。そんなミステリーな展開。
完全版、とあるのは、初版の科学理論では現代の科学理論で証明出来ない内容だからだったようだ。完全版しか読んでいないのでその辺の改訂は不明だが、読んでいて違和感はないので上手く仕上げることが出来たようだ。
読んでいて勉強になるという点が多いのが、この著者の作品の特長の一つと言える。
今回は、心理学・催眠・暗示・脳を中心に様々な専門知識や雑学、トリビアを披露してくれる。そういった点で、やや言い過ぎな部分が多く、冗長な知識のひけらかしに感じる部分こそあるが、個人的に興味のある分野ということもあり、苦には感じなかった。
だが、
人によって「くどい」と思われそうな感じがある。
イマイチぐっと来るほど没頭させるようなものは無く、ストーリーの鍵となりそうな登場人物の多さもあり、いまいち構成というか展開というかもサクサクとまでは行かない。人が死なないという点ではミステリーとしてはなかなか異例だが、話の中枢に専門的な話が絡みすぎている。もちろん、専門的とは言え、素人にもわかるようかみ砕かれているのだが、
上記の知識に興味がなければ、それほど魅力的な内容ではない気がする。
結末は、「まぁこんなものでしょう」といった感じ。やや予測出来てしまったが、意外性はある。上記に述べたように、人間の脳や心の動きが深く関わる内容だった。
完全版に改訂されたことで、現代に適応した形の精神医学、心理学、脳神経外科学、といった部分で勉強になり、精神病に疎い人への警鐘にもなっている内容だが、そこに興味があるかどうかが良作か否かの分かれ目と思われる。
私はそちらに深く興味があるので感想としては満足だ。
評価:★★★☆☆
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