疲れた。
内容(「BOOK」データベースより)
高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
女性作家ということもあってか、主人公女性が主観。生活感漂う雰囲気はそれだけで何となく斬新だった。
そんな彼女に訪れる災厄の連鎖。息子の失踪、愛人の事故、別れた夫の娘の自殺など……。いったいなにが起こっているのか、という点でのサスペンス。
母親の愛情、恋愛を含めた人間関係のドロドロ具合、とかなりよく表現されていて入り込める。
長編らしいといえば長編らしいのだが、同じような内容での引き延ばし感がする。というのも、
前述した、息子がいなくなった母親の気持ちが頻繁に表現される。それだけ想っているということなのだが、全体の半分は占めているのではと思うほどにくどい。
そういうところが全体的に重重しい内容という点で、ホラーテイストなのかもしれないが、私には受け入れられなかった。読んでいてストレスが溜まるばかりである。
そして、
問題はそのストレスがカタルシスとして浄化されるほどの展開、結末が待っていなかったことだ。私としてはこれだけ引き延ばしておいて「え、それだけ?」と思ってしまった。
恋愛サスペンスという点で、ドロドロの痴情のもつれや人間関係が惨劇を生んだといった体裁にしたかった様子だが、少し失敗しているように思える。
愛情の描き方は秀逸だと思えるが、登場人物の扱いや展開が雑な印象で、扱い的には「どんだけ性欲(ストライクゾーン)が強いの……」という突っ込みを入れたくなり、展開は前述したように行方不明の息子を捜す母の心情ばかりで、気が滅入る。(作中の人物の様に気が滅入っているというのは成功かもしれないけれども)
肝心の事件面は尻つぼみだったかな、と。見所は、作者の筆致、表現力、描写力、内容的には情事のもつれの恐ろしさといったところか。
俗な感想を言わせてもらうが、長くて重々しくて疲れた。という感想。
作者の文章力は文句がないのだが、展開の効果的な緩急、あるいは話そのものが面白ければ、と言う実に個人的な不満が連なる作品だった。
評価:★☆☆☆☆
沼田 まほかる
新潮社
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